癖(へき)

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癖(へき)

平日の深夜とはいえ大盛況だ カウンターが5席と 4人掛けのテーブル席が2席 決して広くない店内だが 今日はほぼ満席 10人も入ればみっちみちである 奥にVIPの部屋が1室あり 完全防音で 常連さん向けに開放していて 商談の際に使用される まぁ… ホテルまで待てないおじ様が 「女性と戯れる部屋」でもある そこは商売 そこそこの値段は取るので 叔父も目を瞑っている すみません さっきの2番テーブルの男が 叔父に話しかけている このVIPルームって今使えますか? あぁ、どうされましたか? そこのお姉さんと 少し話がしたいんだけれど… 2番テーブルの客は精算も済ませ 帰ろうとしていた 先ほどの老紳士もカウンターで うとうとと船をこぎ始め 1番テーブルの客も場所を変えようと おじ様が女性の肩に手をかけ 席を立とうとしている あぁ…良いですよ ちょうど客足も少なくなったので ちょっと!叔父さん! 何かあったらブザーを鳴らせば すぐに駆けつけるから VIPルームには 注文用に呼び出しブザーが 取りつけられており 男女で入る際は 身の危険を感じたら押すよう 念を押している 身の危険って… 半ば呆れながら VIPルームのカギを貰い 男を中に通す 喉が渇いていたので 盆に自分用のカクテルとつまみを 適当に乗せ 男のあとについて行った まさか あんな事になるとは思いもしないで…
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