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「じゃあその、同い年の彼氏ができたから、『先生』のほうは振ったってこと?」
もちろん僕は、『先生』と中谷先輩のあいだに何があったのか知らない。口を挟む権利もない。
だとしても、そんなこと少し身勝手すぎやしないか、と思った。
複雑な表情を浮かべる僕に対し、味尾はゆるゆると首を振りながら「この話には続きがある」と言った。
「今年の六月頃、一部の生徒のあいだで中谷未来はレズビアンじゃないか、という噂話が持ち上がったらしい」
僕は驚いて味尾の顔を見つめた。味尾はかすかに頷く。
「結局、その噂は根も葉もないものとして沈静したらしいが、それまでの期間には嫌がらせのような行為もあったそうだ。……もしかしたら中谷未来は、その噂を否定するために、新しい彼氏を作ったのかもしれないね。教師の恋人では、おおっぴらに周知できないから」
その話を僕は、呆然とした気持ちで聞いていた。簡潔に綴られた、二通の手紙。
『先生とは、もう会いません』
『わかりました』
「とりあえず、『先生』が何者であるのかも私のほうで調べてみよう。また何かあれば教えておくれ」
その日は最終的に、味尾のこの言葉でお開きとなった。
しかし、味尾の調査結果を待たずして、この翌日僕は『先生』の正体を知ることとなる。
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