図書室より愛を込めて

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 昔から学校という空間の中で図書室が一番好きだった。  いや、好き、というと少しニュアンスが違うかもしれない。強いて言えば、「図書室が一番自分に合っている」と感じていた。  だから小学校でも中学でも高校でも、ひたすら図書委員を務めてきた。クラスメイト全員分のために用意された委員会やクラス係の席。どうせ何かの役割に所属することは避けられないのだから、だったらせめて自分に向いてそうなものを選ぼうと思って、今に至る。  委員日誌をつけていた僕の手元で、シャーペンの芯がぽきりと折れた。  僕は事務的にシャーペンをノックして、もう一度日誌の続きを綴り始める。大したことは書いてない。今日の天気とか、利用者数とか、貸し出した本の数とか返却された本の数とか、そんなことをだらだらと記録する。  放課後の図書室には静かな場所で勉強したい三年生たちがひしめき合っている。今は九月だから、夏のあいだにドミノ倒しの如く引退に追い込まれていった部活動員たちが一斉に受験生へとジョブチェンジしているのだ。まだ一年生の僕は、その様子を他人事みたいに味気なく眺める。
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