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「shinさん、結局あれから三日間吊るされてたんですか」
「あら小娘、今日は随分マシな顔してるじゃない。そうよ羨ましいでしょ?あなたもワッキー直々の荒縄緊縛プレイを…ひでぶっ」
「やめんか、あらぬ誤解を招くだろうが」
少し騒めく周囲のナカ、テーブルに押し付けられ、口を塞がれたshinさん。
と、その姿が、いつの間にかエントランスにあったテディベアの片割れにすり替わっている。
shinさん名物、変わり身の術だ。
「ったく、相変わらず照れ屋さんなんだから♡
……おめでとワッキー。いつも神々しいけれど、今日は一段と羽ばたいてるワ。
幸せになんのよ、ちゃんと。我慢ばっかりしてないでさ」
「ああ、ありがとうshin」
普段にない、素直な返事。
それは一瞬の、珍しくまともなやり取りだったが、二人の経てきた付き合いの長さを感じさせて、私はまた、ウルッときてしまった。
次にshinさんは、私を指差しながら言った。
「いい小娘?少しの間、本妻のアタシがワッキーをあんたに貸しといてあげる。
だからちゃんと……
ワッキーを、幸せにしてあげてよね。もしちょっとでも不幸にしたら、すぐに返してもらうから」
それだけ言うと、shinさんは、バッと腕で顔を隠し、そこから走り去った。
「shinさん…」
彼は、本当に帯刀さんのことを好きだったんだ。結婚しちゃって寂しいのに、私達を励ましてくれて——
「えー、次の出し物は、田所慎太郎(shin)さんによります、シャンソン弾き語りでございます」
「ハァイ、ボンソワーーール♡」
……おい。
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