満を待しての

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…………。 広い部屋に1人っきり。 ここは、とても静かだ。 テレビの音だけが、広い部屋に響いてくる。 『えー、それでは明日の天気をお知らせ…おっと、ここで緊急ニュースが入りました。  ええっとこれは…シンガポールチャンギ国際空港発…日本行きですね。 スクートT808号機、たった今、通信不明、消息を絶ったと連絡が入りました。  シンガポール発日本行き……』  え!  私は、ソファを跳ね起きた。テレビに映る、白のテロップを確認する。  シンガポール発日本行き。テーブルのスマホを手繰り寄せると、帯刀さんの帰りの便を確認する。  シンガポールチャンギ空港発、T808便……  間違いない。  ウソ……!    ニュース番組が続報を伝えている。  『えー、たった今、T808便の乗客名簿の情報が入ってきました。あいうえお順に読み上げます。画面の方にも表示されますので、併せてごらん下さい。  アダチケイスケ、アイダミキ…』    私は、テレビ画面の前に噛り付き、流れていく白文字のテロップを追いかけた。  そんな…、そんなの嘘でしょ?  帯刀さんがあんなこと言うから、あんなフラグを立てるから!  急に電話が入って乗れなかったとか、トイレ行ってたら間に合わなかったとか…  何だっていい、どうか乗り損ねていて欲しい。  ニュースキャスターは引き続き乗客の名前を読み上げている。  『シェン・ズハン、シャオ シュフゥイ、スーザン・デイビス、セモトアキラ……タテワキ___』    身体がふわりと宙に浮いた。テレビ画面が遠ざかり、私はそのまま仰向けに絨毯の上に倒れた。  嘘。      
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