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涙が、溢れ出てきた。
どうやったって、ポジティブには考えられない。
兎に角、何かしなくちゃいけないはずなのに、身体が金縛りにあったみたいに動かない、声の出し方も分からない。
止めどなく、ただ溢れてくる涙を拭きもせず、ただ、真っ白の天井だけを網膜に映し続ける。
文字通りたった独り、真っ白になってしまった空間。
帯刀さん、帯刀さん。
大好きなのに、愛してるのに、どうして、どうしてなの?
……し、……はし。
ちょっぴりくぐもる、掠れた甘い声も。
こはし……こはし?
長い睫毛も、眉にかかる前髪も、少し寂しそうに笑う顔も。
全部全部好きだった。
始めの頃は、決して優しくなかったし、口は悪いしすぐからかうし。
それでも今は、それすら癖になるくらい好きだった。
なのに…
本当に私達は、添い遂げられない運命だったの……かな?
『こはし、おーーーい小橋』
「帯刀さん!」
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