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「えっとその…
これから、どうか宜しくお願いします」
「こちらこそ」
三つ指ついて、ではありませんが…
きちんとソファの上に正座し、ペコリと頭を下げた私に、彼はニッと口角を上げた。
帯刀さんは、夜の10時頃になって帰ってきた。
6月以降、気の早い光久の決定で、彼には早速、帯刀が経営する4、5つのグループ会社の全てに役職がついた。
今は、さらにその傘下の子会社全部に挨拶回りをしているところ。
二足ではなく、5つも6つもワラジをはかなくちゃならないから、帯刀はものすごく大変なのだ。彼自身が決めたことだから仕方がないが…
タコさんも真っ青だ。
私が1人でちょこちょこ引っ越し作業をしている理由もその辺になるのだが…
今夜の彼は、そんな疲れは感じさせないほど元気そうだった。
「そりゃあね。
これからは帰ったら毎日、家にこはしがいるわけだし?」
そんな台詞を、セクシーボイスでのたまって、額をコッツンしてみせる彼は、やっぱり疲れ過ぎていて、頭にウジでも沸いているのかも知れない。
あまりの甘ったるさにすっかり目を回していると、立ち上がってクロゼットに向かいかけた彼が私を振り返った。
「あれ、そういえばこはし…まだ風呂入ってないの?
メシはまだ?」
「ふえ…?ああ、ご飯はちゃんとコンビニで済ませました。お風呂はまだ…」
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