祈りの力と悪魔の力

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祈りの力と悪魔の力

「んじゃまあ森の外にでもいくか。クソ勇者を探しにな。」 アルゴは森を出て町か村を目指そうと歩きだした。 「森をでるのは3年ぶりか?まあ騒ぎを起こすつもりはねえ。勇者の情報でも聞いて旨い飯でも食うか。」 アルゴの見た目は悪魔だが今は魔法で普通の人間の姿になっていた。 「どこまで歩けば町がある?てか歩いたら町は出てくんのか?」 アルゴは3年間森からは出ていないため、どこに町があるかなど把握していなかった。 もとより地図をよむことはできないが... 前回村に出たのは魔獣を追っていたらたまたま出ただけであった。 「チッ。仕方ねえな。探すか」   「「「デビルズロケーション!」」」 「デビルズロケーション」...中級悪魔魔法。 一定範囲内の地形や生体反応を知ることができる。範囲は術者の魔力によって決まる。 アルゴの場合自身を中心に半径20㎞ほどが範囲。 「ん。南に8㎞ぐれーのとこに多数の生体反応があるな。行ってみるか。」 数十分かけてたどりついたそこは祈りの町メリアだった。 「ふぅ。やっとついた。まず飯にするか!」 町へ入る門をくぐったその時       キーン キーン 鐘のような音が鳴り響いた 「なんだこの音?うるせえな。」 その音を聞き多数町人があつまってくる。祈りの町だけあってシスターや修道服を着たものが大半だった。 「この門にはねえ悪魔を知らせるように結界をはってあったんだよ。悪魔が門を通った瞬間この鐘の音がなる。」 一人の老人が前に出て言った。 「悪魔?俺がか? 冗談はよしてくれよ。てかお前ら何だ?」 アルゴは騒ぎを起こすつもりはないため、悪魔であることを隠すつもりでいた。 「わしはホウジュ。この町の長だよ。穢らわしき悪魔。後ろのもの逹はこの町の聖魔法使い逹だ。人間に化けているようだが、この町は祈りの町。神に祈りを捧げる町だ。その町の町人逹は悪魔などすぐに見抜ける。」 「へえ。やるじゃん。」 アルゴは魔法を解き、悪魔の姿へ戻った。 「穢らわしい!」 「出ていけ!」 町人たちが口々に言う。 「神の天敵悪魔よ。いまここで我々が浄化する!覚悟しろ!!」 「旅を始めた最初の町でこれかよ。カカッ笑えるなあ。いいぜ全員相手してやるよ!」 突然だが、魔法には相性が存在する。火魔法には水魔法が強いといったように、悪魔魔法の天敵は聖魔法だった。メリアの町人100人ほど対アルゴ一人。つまりアルゴの状況は最悪であった。 「神よ我に力を。」   「「「セイクリッドフォース!」」」 町人がみんな同じ呪文を唱える。無数の純白の光がアルゴに襲いかかる。 セイクリッドフォース...中級聖魔法。 人間がセイクリッドフォースを受けると、かすり傷程度のダメーにしかならないが悪魔に対しては効果抜群。悪魔が一発受けるだけで致命傷となりうるほどのダメージである。 「そんなんでオレを殺せると思ってんのかァ!?」   「「「デビルズウォール!!」」」 「デビルズウォール」...中級悪魔魔法 自身の前方に一定耐久値のバリアを張る。例のごとく耐久値は術者の魔力に依存する。 キンッキンッキンッ セイクリッドフォースはデビルズウォールに防がれていく。そして全てのセイクリッドフォースが防がれた。 「ば、バカな!?聖魔法であるセイクリッドフォースが悪魔の魔法に負けるだと!?」 ホウジュは慌てた口調でそう言った。焦りが隠せないようだ。 「カカッ!聖魔法ってのも大したことねーなー!」 アルゴが煽り口調で言う。 「黙れ悪魔!貴様が死ぬまで撃つだけだ!」 「あァ?テメェらのターンはもう来ねえよ。今度はオレの番だ。」 「「「アブソリュートドーム!」」」 アルゴを中心として漆黒の円がだんだんと広がっていく。その円はホウジュと町人を包んだ。 「な、何だこれは!?」 ホウジュが叫んだその時、町人の体が干からび始めた。 「カッカッカッ!アブソリュートドームはこのドーム内にいる俺以外の全ての者の魔力と生気を奪って俺の力にする。」 「なんだと...」 ホウジュの体も例外なく干からびていく。 「つまりテメェらは大嫌いな悪魔の力になって死ぬんだよ!カーカッカッカッ!」 「くっ、おのれ!貴様には必ず神様が罰をくだすぞ!!!愚かな悪魔に天罰あれ!!」 ホウジュが最後の力を振り絞り叫んだ。 「俺だって、望んで悪魔になったわけじゃねーんだよ...」 アルゴは微かな声でそう呟いた。その声色はどこか悲しそうで、寂しそうで... しかしアルゴはすぐに切り替えて 「最高のご馳走ありがとさん!じゃーな!」 元気に歩きだした。 「あっ!そーだ!勇者について聴きたいんだけど...」 アルゴは振り返ったが 「全員ミイラか!カカッ」 そして再び歩きだした。 「次はどこへ行こうかなー?」 アルゴのフクシュウの旅はまだ始まったばかりである。
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