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3.葛藤
◯建物内・廊下(朝)
奈月、京乃、早織の3人が話している。
理佐子、3人に向かって歩いていく。
理佐子「ねえ、見周りあなた達の番でしょ?」
京乃「あっそうだっけ?」
理佐子「これで何回目?忘れるの」
奈月「分かったって。うっさいなあ……」
理佐子、ムッとする。
理佐子「安全を確認する為に絶対必要だって言われてるでしょ?
今度やったら罰を受けてもらう事になるよ」
奈月「そんな権限あるんだ、あんたに」
奈月、理佐子を睨む。
理佐子「私は藤井さんにまとめ役を任されてる」
奈月「ふん、あの人が勝手に決めた事でしょ」
理佐子「……」
京乃と早織は黙って見ている。
理佐子「とにかく、これ以上こういう事するなら、
藤井さんに報告するから」
そう言ってその場を立ち去る理佐子。
奈月「チッ」
舌打ちする奈月。
京乃「副キャプテンの使命感かね~」
早織「架純がいなくなってやり易いんじゃない?」
イラつきが収まらない表情の奈月。
◯建物内・廊下
藤井、廊下を歩いてる。
アスナと未沙、藤井に近づく。
未沙「藤井・セ・ン・セ・イ」
藤井、振り向く。
藤井「名前で呼べ」
未沙「え~女子高生に先生って言われるの、
嬉しくないんですか?」
藤井「バカにされてるとしか思わんな」
未沙「毎日、可愛い子たちに囲まれて楽しくないんですか?」
藤井「俺は子供には興味ない」
未沙「え~ショック~藤井さんのこと、
カッコいいって言ってる子もいるのになあ~
まあでも、恋愛対象としては歳離れすぎかあ」
アスナ「ちょっと、未沙」
未沙「あっゴメン」
藤井「なんだ?」
未沙「ちょっと2人で銃の練習したいんですけど、いいですか?」
藤井「2人で?」
アスナ「ストレス解消です」
藤井「何?」
未沙「あ~いや、その、
どうしても確かめたいことがあって!」
未沙、慌てて言う。
藤井「ふ~(ため息)弾も無限にある訳じゃないんだぞ。
貴重なものだ。
いざという時の為にも無駄にする訳にはいかないんだ」
未沙「分かってます。そこを何とか……」
アスナ「忘れないうちに確認したいんです。お願いします」
藤井、困った顔。
藤井「いいだろう。5発だけなら認めてやる。
あとで俺の部屋に取りに来い」
アスナ「ありがとございます」
未沙「ありがとうございます!」
アスナと未沙、軽く頭を下げる。
藤井、その場を去ろうとする。
未沙「ありがとう~先生~」
未沙、笑顔で立ち去っていく藤井に手を振る。
藤井はノーリアクション。
◯建物内・3階の廊下(夜)
友梨香と渚、歩いてる。
渚、立ち止まる。
渚「ちょっと誰?
窓開けっぱなしにしちゃ、絶対ダメって言われたでしょ!」
その場にいる生徒たちに言う渚。
渚「もう~しょうがないなあ~」
渚、窓を閉めようとする。
ゾンビ(若い男)、突然顔を出す!
(身体能力の高いゾンビが、建物の配管をよじ登ってきた)
渚、ビックリする。
ゾンビ、渚に飛びかかり首に噛みつく。叫び声をあげる渚。
友梨香「渚!」
他生徒、悲鳴をあげて見ている。
ゾンビ、渚の血を貪り啜っている。
ゾンビ、友梨香に目を付ける。
友梨香、拳銃を構える。
ゾンビ、友梨香に向かって突進する。
友梨香、向かってくるゾンビを抑える。
その衝撃で拳銃を飛ばされる。
ゾンビ、友梨香に覆いかぶさる。友梨香に噛みつこうとする。
友梨香、必死で抑える。
友梨香「取って!!」
飛ばされた拳銃を他生徒に拾うように頼む友梨香。
他生徒、震えて泣いてるだけ。
有美、意を決したかのように拳銃を拾い友梨香の近くに置く。
有美、置いた後は一目散にすぐ逃げる。
友梨香、拳銃に手を伸ばすも中々届かない。
ゾンビ、凄い形相で友梨香に噛み付こうとしている。
友梨香、全身全霊でゾンビを跳ねのけ、拳銃を拾う。
友梨香、素早く拳銃をセットする。
ゾンビ、襲いかかる。
友梨香、拳銃を撃ちまくる。銃声音が響く。
ゾンビに何発も弾が当たる。叫び声を上げるゾンビ。
ゾンビの頭に一発当たる。倒れるゾンビ。
藤井、樹里、理佐子が慌てて掛けつける。
(藤井、樹里、理佐子は銃を手に持っている)
友梨香、息を乱しながら藤井を睨むように見る。
友梨香の顔と制服に血が付いてる。
周りでは他生徒が抱き合って泣いている。
◯建物・屋上(晴れ)
友梨香、あぐらをかいて座っている。左手には野球グローブ。
ボールを上空に上げて1人キャッチボールをしている。
寂しげな表情の友梨香。
友梨香、グローブを外して立ち上がる。
友梨香、外のゾンビの群れを見る。
友梨香、思いっきりボールを外に投げる。
◯建物前の広場
ゾンビたちがいる所にボールが落ちる。弾むボール。
その落ちたボールに軽く反応するゾンビたち。
◯建物・屋上
友梨香、外を見ている。
藤井、友梨香の元に歩いてくる。
藤井、友梨香の隣に立つ。
藤井「川口は俺が見送った。蘇る事はない様にしといた」
外を見ながらがら言う藤井。
友梨香「……」
友梨香、無言の後に軽く頷く。
◯建物・屋上のドア前
友梨香、グローブを用具箱に仕舞う。
ドアを開けて屋上を後にする。
◯建物・屋上
藤井、哀し気な表情で外を見ている。
◯建物内・広い部屋
奈月、ダンスを踊っている。
近くにはDVD/CDプレーヤーが置いてある。
京乃と早織がそれを見ている。
奈月、キレのある踊りを披露している。
奈月、踊りを止める。
奈月、音楽が流れてるプレーヤーを止める。
タオルを取り汗を拭く奈月。
京乃「さすが奈月、全然レベル落ちてないね」
そう言って500mlペットボトルのジュースを飲む京乃。
奈月「たまに踊んないと頭おかしくなるわ。
こんな建物に閉じ込められっぱなしで」
奈月、500mlペットボトルのジュースを開けて飲む。
早織「はあ~暇だわ~スマホないと駄目だあ~」
奈月「どうせ使い物にならないでしょ」
早織「あっそうか」
京乃「奈月の彼氏って大学生だったよね?大丈夫なのかね?」
奈月「さあねえ~」
京乃「気にならないの?」
奈月「う~ん、まあそろそろ別れる予定だったし」
京乃「今頃ゾンビかも?」
早織「ひど~い」
軽く笑う奈月。
京乃「まあ奈月はどうせモテるからなあ。その顔だもんね」
早織「アイドルグループのオーディション受けたんだっけ?」
奈月「まだ決めてない」
京乃「恋愛禁止じゃないの?
奈月に彼氏いないとか無理だと思うけどな~」
奈月「それより私も銃の撃ち方教わろうかなあ」
京乃「なんで?」
奈月「持ってた方が有利じゃん」
早織「確かに」
奈月「撃てたらカッコいいしさ。今度、藤井に頼んでみる」
京乃「教えてくれるかね~」
早織「3人で頼みに行こうよ」
奈月「そうだね」
奈月、そう言って飲み終わったペットボトルを、
近くのゴミ箱に投げる。ゴミ箱に入るペットボトル。
◯建物内・3階の廊下(朝)
有美と生徒2人、窓の外・左下を観ている。
生徒D「ほっとけないよね」
生徒E「ちょっとなあ」
瑞葉が歩いてくる。
有美「あっ土橋先輩」
生徒D「おお、瑞葉、ちょうど良いとこに」
瑞葉「?」
生徒E「あれあれ」
生徒E、窓の左下を指さす。
1人のゾンビが1階から何とかよじ登ろうとしている。
だが、なかなか登りきれない。
生徒D「なんとかした方が良くない?渚の件もあるし」
生徒E「まあ、あの感じだと、
ここまでは上がってこれないと思うけど」
生徒D「うん、渚の時は、ほんと凄いゾンビだったんだね」
生徒E「そうだね……」
有美「でも、なんか不安です……あのままにしとくの」
生徒DとE、頷く。
瑞葉、納得した感じでウンウンと頷く。
瑞葉、窓の外を慎重に見渡す。
生徒D「気をつけてよ」
瑞葉、腰回りに付けてあるウエストバッグから拳銃を取り出す。
瑞葉、窓をそっと開ける。そして窓の左下を覗く。
瑞葉、窓から少し身を乗り出し、
下のゾンビに向かって銃を向ける。そして狙いを定める。
瑞葉、ゾンビに向かって銃を何発か撃つ。
弾がゾンビの体や頭に当たる。ゾンビ、倒れる。
生徒D、窓から下を覗く。
生徒D「やった、倒した!ざまあみろ」
有美「さすが土橋先輩!」
生徒E「あ~気持ち悪かった。ありがとう、瑞葉」
瑞葉、頷いて軽く微笑む。そして、その場を立ち去る瑞葉。
生徒D「クールやなあ」
生徒E「瑞葉も、もうちょっと喋ってくれると良いんだけどねえ~」
有美「そうしないのが、カッコいいんじゃないですか」
生徒E「そうか?」
歩いていく瑞葉を見ている有美と生徒2人。
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