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「はぁ」
青年がため息をつきながら夜道を歩く。
今日の昼に研究所長から「結果が出ないのならやめたまえ」などと言われ、失意のまま帰路についていた。
青年は人の寿命を科学で延ばす研究をしていた。しかし伸びた寿命をどうやって天寿では無いと証明するのだろう。
そんな簡単な疑問さえ、青年は解決できずにいた。
やがて青年はある家の門前にランの鉢植えがあるのを見つけた。
「なんだこれは、ランだろうか、立派に花をつけているな、おやこれは、なに?もらってください?ははぁ、理由は知らんが、お前も俺と同じ、見捨てられたのか、どれ今日この日に見つけたのも何かの縁だ、俺が貰おう」
そう言って青年は重い鉢植えを両手に抱え、持って家に帰った。
次の日から青年は結果を出そうと研究所に泊りがけで研究した。
この研究が人の生活をガラリと変えると信じて疑わなかった。
だが何も変わらなかった、どうやって変えるのかさえ見出せなかった。
そうして徒労に終わった二週間ぶりの帰宅時に、あっと気づく。
拾ってきたランのことをすっかり忘れていたのだ。
枯れているだろう、そう思いながら帰ると元気に花を咲かせるランの姿があった。
「なんと、これはどういうことか、土はカラカラで、部屋には光もなかったというのに」
青年は不思議に思い、それからしばらくの日々、ランを観察した。
するといつまで経っても花を咲かせていることに気がついた。
そのランはどんな環境であっても枯れることを知らず、そこに咲き続けた。
「もしやこれは、俺の研究に素晴らしい成果をもたらすのではないか?」
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