powder snow

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消防の消火活動をただ呆然と見ていると野次馬をかき分けて車が入ってきた。 警察の人だろうか。 叔父が車に駆け寄ると神田さんが降りてきた。 叔父が車に乗り込むように俺に支持する。 明らかに一般車両ではない車に乗り込む少年の姿を野次馬は物珍しく見ていた。 車に乗り込むと叔父が事情を説明してた。 一通り話を聞き終えた神田さんから思いもよらない提案がされる。 「我々と合同捜査をしていただきたい。一般のしかも高校生を引き込んで捜査をすることに迷いがありましたがこのレベルになると君たちだけに任せるわけにはいきません。連続殺人を尾崎と追っていたいた部下たちと合同で捜査していただきます。 榛名くんは絶対に織田くんから離れず単独行動はしないでください。」 すごい展開になった。 しかし、この件にここまで深入りしてしまった以上指示に従うしかない。 「あの、僕たち多分八咫烏に監視されてると思うんですけどこんなにおおっぴらに行動して大丈夫でしょうか?」 「少数で動くより警察という笠の下にいた方が安全でしょう。まぁ、我々警察の上層部も八咫烏に掌握されているでしょうが…」 そう話している間に連続殺人事件の捜査支部が置かれている杉並署に到着した。 警察署… 今まで特に素行が悪かったわけでなかったためこの場所に入っていく自分への違和感が頭を混乱させる。 会議室の一室に案内され待つように言われた。 叔父はずっと黙ったままだ。 車の中にあった資料がカバンの中に入っていて俺は落ち着かない。 本来一般人が持っていていいはずがないものである。 「事務所、なくなっちゃったね。」 「ああ。でもこっちの方が安全だ。俺が迂闊だった。頭に血が上ってたんだよ。」 「尾崎さん。大切な人だったんだね。この前事務所に神田さんがきてから叔父さんから悲しい匂いしてなかったよ。尾崎さんってどんな人だったの?」 叔父は壁に寄りかかり、俯きながら少し口角を上げた。 「俺が警察を辞めるまでコンビ組んでたんだよ。イカツイ見た目して、正義を体現したようなやっだった。どんな小さな犯罪も絶対に許さず犯人を確実に追い詰める。予測と確実な証拠取りが得意で一度も勝てなかった。よく2人で無茶したよ。でも俺は…」 叔父の口が止まった。 後悔混じりのため息を吐き黙ってしまった。 「八咫烏が関係してるんだね。」 「ああ、俺が個人的な付き合いのあった情報屋が失踪してな。個人的に行方を追ってたんだよ。 そしたらある日俺の家に手紙が届いた。」 2年前。 夜家に帰るとポストの中に見慣れない封筒が入れられている。 差出人の名前も消印もない。 中には一言だけ書かれた紙が入っている。 "これ以上関わるな。" 裏ではよくある脅迫だと思い全く気に留めなかったが安易な思考は俺を絶望へと落とすことになる。 手紙のことなど忘れひたすらに情報屋を追ったが何の手がかりも出てこない。 裏の人間がやったとしても何かしらの噂や情報が出てくるものだが一切ない。 しばらく休みを忘れて捜査を続けていた俺は疲れ切って家に帰った。 扉に手をかけると締めていたはずの鍵が開いている。 ヤバイ… 恐る恐るドアを開けるとものすごい勢いの拳が飛んできた。 拳は俺の額を直撃した。 「健二!!1ヶ月以上も連絡よこさないなんてどういう神経してんのよ!!」 殴られた額を抑えている手の隙間から覗くと鬼のような形相の雪が俺をにらみつけている。 雪は元々警察官で俺との婚約を機に警察を辞めた。 現役時代は美人警官としてそれなりに有名だった。 雪という名前の通りの白い肌にハッキリとした目鼻立ち。身長が低いためちょっとしたマスコットのような存在だった。 俺たち婚約はしていたが俺がほぼ家に帰ることもないためバラバラに暮らしていた。 捜査で連絡をとり忘れる事が多くあった俺は毎回のように殴られていた。 小さな体のどこにそんなパワーがあるのか… 俺の未来は明るいはずだった。 この時までは。
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