死臭

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指定された座標を調べるとそこはホテルだった。 廃墟になったビルや工場を想像していただけに気が抜けてしまう。 叔父も驚いた表情で何度か調べなおしていたがやはり変わらずホテルの位置を示した座標だった。 ホテルのロービーに到着し辺りを見渡すと凛とした表情でうつむき椅子に深く腰掛ける篠崎さんがいた。 久瀬さんの姿はない。 「ねぇ、いたよ。」 叔父の肩をたたきそう伝えると叔父はズカズカと篠崎さんのいる方へと向かう。 「おい。ちょっと!!」 篠崎さんの目の前に到着すると彼女は青い瞳をこちらに向ける。 数秒の空白の後に口を開いたのは篠崎さんだった。 「とりあえず座ってもらっても?」 叔父と顔を見合わせて正面の椅子に腰掛ける。 「何から聞きたいですか?特に元刑事さん。」 学校で見ていた彼女とは打って変わって酷く冷たく無機質な声で僕らに尋ねる。彼女の放つ冷気は俺の鼻をツンと突いて眉間が痛む。 「組織のトップにあったのか?」 「会ったというよりは会話をしたというのが正しいですね。性別も年齢もわからないくらい加工されていて、どこから話しかけられているのかすらわらかなかった。」 「再構成の具体的な内容は?」 「古くからはびこる人間を一掃して新しい体制を作ること。話から察するに今の帝自身に大きな力はない。むしろその下の老人どもが権力を握ってる。」 「権力の集約化か。どうさて俺たちに情報を流す?お前も組織の人間だろ?」 「私はこの間入ったばかりの新参者。それに私の家族は代々奴らの駒に過ぎなかった。親が殺されて子が継ぐ。その繰り返しの連鎖を断ちたい。」 「たとえその為でも殺人は許されるもんじゃねぇぞ。」 2人の言葉は悲しみと怒りの匂いの爆弾のように俺に入ってくる。 息をすることすら辛くなるほどに濃く空間を重く満たしている。 重たい空気を晴らすように篠崎さんが話し始めた。 その言葉からは切望の香りがした。 「私は逃れることができない権力の濁流に呑まれて組織に入った。親の代以前から組織の手足として暗殺と隠蔽を強いられてきた。父の血を半分だけ受け継いでる私はそんな事知らなくても殺人に手を染めて堕ちた。 人の命を摘み取る事で生を実感し生き甲斐を見いだしてしまう異常者で普通の世界では生きていけない。 そんな私は自分自身の存在を否定してる。 最後に私を肯定する理由が必要なの。」 叔父は頭をかきむしり篠崎さんに顔を近づけて睨みつける。 「俺はお前が今後どうしようとお前を肯定しない。でもな、この山だけは別だ。 協力者がいる。この山が終わるまで人は殺すな。 この山が終わったら償え。 償うまでは死ぬな。 死ぬことが許しなんてのはどこぞの宗教の価値観だ。 残されたものは納得しない。」 篠崎さんは真っ直ぐな眼で叔父を見つめる。 「死んで許されようなんて思ってない。コレは対等な条約。いい?」 叔父は近づいた顔を離し天を仰いで溜息混じりに答えた。 「生意気なんだよ。いいから情報よこせ。」 高校生の殺人鬼に元刑事、それと普通の高校生。 俺にとっては頼もしい人たちだけどこのチームは不安しかない。 俺次の登校日まで生きられるのかな…
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