夏月の1週間

10/29
前へ
/32ページ
次へ
 黒川さんにも手伝ってもらって片付けた弁当の残骸は、食堂に頼んで捨ててもらった。  さすがに土足ではいる食堂の床は、キレイじゃない。俺は無理。  社長の汚れたスーツも気になったけど、知らん。俺のせいじゃない。長瀬が弁償すればいいと思う。俺の弁当も。  そのまま事務室に戻ろうとしたら、社長に呼び止められた。昼はどうするんだという質問には、あまり答えたくない。  答えたくないが、そんな訳にもいかないので「昼は抜きます」と答えたら、案の定「ウチの給料はそんなに低かったか?」と真面目に聞かれて困った。  その質問がいちばん困るんだよ。社長。  だって貰ってないわけじゃない。と言うか、役職が付いてるので結構な額を頂いてますよ。  ですが常にギリギリの俺が、先週の金曜日に清水の舞台から飛び降りて餅つき機を買ってしまったんです。今週末の給料まで、なんとかなると踏んで。  ・・・って、そんなこと言えるかーい。 「えー・・・と・・・おなかいっぱいなので?」  と答えてみた。・・・失敗だったようだ。ちっ   だってどうしても食べたかったんだ。つきたての餅。餅つき機は現品限りの展示品だったから安かったし、配送は平日で週明けのノー残業デーの水曜の7時に配達頼んだんだ。だから今日、餅米買って帰るの。もの凄く楽しみなの。俺。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加