夏月の1週間

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 通勤ラッシュは辛いって聞いたことがある気がする。  俺には関係ないけど。だって車だし。  街の中心部にある会社とは違い、郊外にある工場の事務員。女の園の中の黒一点。あ、部長がいるわ。一点じゃない。  高卒で入社してはや8年。若い若いと言われる俺もすでに26歳。  なのにモテモテ。ランチは1人で食べた事ないし、お茶だって率先して入れてくれる。  26歳なのに正社員だから、係長だし。  なんにも実績ないけど。  工場には近所のご婦人方がパートでいらっしゃるから、平均年齢は高い。・・・だからモテモテなのかもしれない。  ご婦人方はとにかくよく喋る。もちろん、長年勤めていらっしゃるので仕事を蔑ろにする人なんて1人もいない。  いないのだが・・・まぁ、手も動いてるが口も動く。仕事も早いが噂も早い。  出社してからの出来事が、10時前にはすでに周知の事実。なんだそれ。  ご婦人方によると、今日は社長がお見えになるらしい。何時に来るかわからないから、ご婦人方のお化粧が濃い。匂いがきつい。  そして、社長は事務室には来ない。毎度の事じゃないですか。おねぇ様方。  ところでウチの社長ってどんな人?・・・会ったこと無いなー。社内報で見た気もするけど、ちょっと似てるなーって思った気もするけど名前違うし。写真で見る限りおっさんだったし。うん、別人別人。  海外に行ってるって言ってたし。  そうやって日々の作業を淡々とこなし、やっと待ちに待ったお昼休み。  「今日もお弁当ね」  と声をかけてくれたのはこの事務所で1番の古株の黒川さん。もう50歳に手が届く歳なのに見た目も気持ちも若くてとっても綺麗な人。腰のクビレが秀逸、と噂の美人。大学生の娘さんがいて「生意気で大変なのよー」とコロコロ笑う。  黒川さんがこんな感じなので、この事務所はホンワカした雰囲気の居心地のいい場所なのだ。  みんな言う。黒川さまさまって。  俺も黒川さん、大好きだ。
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