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「ったく」
「ごめんな、三杉」
「助かった」
群がっていたクラスメートがいなくなったのを見計らいそう声をかけると、航基に贈られたラブレターの文面に視線を走らせていたその眼差しを二人に向け、にっこりと微笑んだ。
「よかったな、テスト前で」
「え?」
「テスト期間中だったりしたらそのフラストレーションの餌食にされて、いくらオレでもどうすることもできなかったと思うぞ?」
…ただでさえこの学校は、スポーツに特化している高校だ。
何人ものプロ選手を排出していることからも、どんなに馬鹿騒ぎをしようと普段がストイックに競技と向き合っている分、ちょっとしたイベントごとに弾けてしまう連中にとって、些細なイレギュラはこの上ない『娯楽』として捉えられがちだ。
そのせいでこの三杉大輝とその相方(?)の的場紅葉がどんな目に遭っているのかを知っている航基たちは、苦い薬でも飲んだような顔をして、無理に笑う他なかった。
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