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「明らかに、書き方で自分が誰なのかを悟られないようにしてるな」
そう言いながら航基の隣で腕組みをしたのは、同じクラス、同じ部活に所属している地井和馬だ。
明日は自分が、数Ⅱで指される番だから勉強しなければ、と珍しく思ったのに。
いつものように、ノートを机の中へ置いたままだったと気がついた航基は、部活上がりで帰り支度をしていた和馬を伴い、誰もいない教室へと来たことで、こんな顛末に至ったのだった。
…そんな航基は現在、肺気胸のため部活を休んでいる。
退院して約一週間が経つが、その後の様子見と間もなく期末テストが行われることもあり、暫くは療養に努めよ、というバスケ部のコーチからお達しが出ていた。
元が『ひょろ長』の航基は、この長身を生かして特待生で入学したこの学校に見合う活躍をしなければという思いに駆られ、がむしゃらに部活と向き合い、それに付随した結果を出さなくてはと躍起になっていた。
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