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――…まさか、和馬のはずがない。
でも、きっと…和馬しかいないはず…と。
学年が上がるのと同時に親しくなり、今だ名字で呼び合う仲ながらも、誰より親しい友達になりつつあるという自覚は、お互い口にしなくとも感じ始めていたことだった。
お互いの距離が近いと、感じるように、なって…
『友達』の枠組みにはまるのではなく、互いに恋愛対象と意識して見ていたのだと思うだけで…どれほど航基の心が舞い上がっているのかを、目の前にいる和馬はきっと知る由もないだろう。
だから…
だからそうだったらいいという期待する気持ちを抱いた航基は、事の次第を確かめるため、和馬を呼び出した。
『お前があのラブレターを書いたのか?』
と、問い、ただすために。
間違いだったら恥ずかしい。
でも、間違いなんかじゃなければいい…と祈りながら、航基はここへやって来たのだった。
「学校まで変わってしまえば」
そんな航基の葛藤などまるで気がついていないような顔をして、和馬は薄い唇で言葉を刻んだ。
「どんなに想っても、叶う見込みはゼロに近いと思ったんだ。 だから…でも、正面切って告る勇気がなくて、手紙にしようと思ったんだ。 ごめんな、こんな騒ぎに巻き込んだりして」
「べ、つにっ…!」
「でもまぁ、テストもあって、そのどさくさでみんなどうでもよくなったみたいだな。…このまま何もしないでおけば、みんな自然と忘れるだろうな」
「――…忘れ、る…?」
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