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(まさか)
ここにきて、和馬は航基の気持ちを確かめないまま、全て『なかったこと』にしようとしている…?
大輝の助けを得て解を求め、呼び出した和馬の口から直接受けた告白も、名乗らないままなりに、気持ちのこもったラブレターを書いたことも、なかったことにしようとしている気配を感じた航基の胸に、収まりかけた高揚を呼び戻す赤い炎が、再び灯った気がした。
「ふざけんなよ…」
「…え?」
「勝手に完結させんなよッ! あんな手紙書いといて、今さらなんにもなかったことにしようとすんなよなっ!」
「いや、だからあれは、離れたらきっと忘れられると思ったから、忘れられないようにしようと思って書いた手紙で…」
「離れた程度で!」
突然感情を爆発させた航基を宥めるような押さえた声で話す和馬に向かって怒鳴ると、その勢いに押された和馬は言葉を失い、押し黙る。
「オレが…オレが和馬のこと、忘れるわけ、ないだろっ…!」
「航、基…?」
涙目のまま拳を握り、きつく唇を噛んで溢れ出しそうな感情を押し殺す航基の姿に――和馬は、航基が己れと同じ感情を抱いていることを…知る。
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