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「犯人、探すか?」
淡々とだが、航基に対する自分の気持ちを示す文面を書き綴った男が記した、自分は『K・S』であると名乗っている一文を指先でトンッ、と指した和馬の手を机と同じ目線で見ていた航基は、暖房がなく冷える空気に鼻をすすりながら、
「いい」
と応え、和馬の言葉を否定した。
「だって…『好きでした』っていう、過去形だし」
“君が好き。 面と向かい合って言うのは恥ずかしいけれど…君が、好きでした。”
…それがこのラブレターを書いた主からの気持ちであり、過去形にされた結びの言葉からも、言わずにはいられなかったその想いの丈を感じさせられた一言であった。
(だから…無理に、探したくない)
そりゃ確かにオレの知らないうちに、オレのノートにオレのペンでこんなこと書くなんて許せねぇけど、とは思うものの、難しい顔をしてノートに鋭い眼差しを注いでいる和馬の顔を盗み見た航基は、とくん、と波打つ胸に手のひらを押しつけながら、唇を噛んだ。
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