83人が本棚に入れています
本棚に追加
(『K』くんの気持ちには応えらんねーけど…オレにも、分かるし)
――…人を好きになる気持ち。
何より…同じ男を好きになってしまって、苦しくて…切なくなる、気持ち。
“言わずには、いられなかった。”
同じ男同士で気持ち悪がられるかもしれないけれど、という一文の後に記されたその一言は、同じような想いを胸の奥底に隠し持つ航基の胸に――深く、染みた。
(でも)
このラブレターの送り主である『K』もそう考えたように、大概の男が恋愛対象に選ぶ相手は異性だ。
…こんな感情を抱くのは稀。
そう思うとこの束の間の沈黙が重く感じずにいられなかった航基は、心とは裏腹な言葉を口にしながら立ち上がった。
「男子校でコレは、ちょっと…だな」
「…うん」
航基の言葉に応える瞳は、揺れる不安を写したその目を見つめ返さない。
それでもその呟くような声が胸に刺さった航基は唇を噛みしめ、痛む胸を労るように開いたノートを閉じた。
.
最初のコメントを投稿しよう!