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「でも…そう思うなら、尚更このままでいいのか?」
このまま何もなかったようにしようとする航基に対し、
『男同士でラブレターなんかない』
と否定の言葉を口にしたことを、
『本当に、それでいいのか』
という問いかけが投げかけられた航基は、和馬に背中を向けた。
「誰かを好きになるっていう気持ち、オレにも、分かるから。 だから、ムキになって探したりしたら、そいつの気持ちをからかってるみたいになるだろ。 だから…いーんだ」
「…中村が、そう言うなら」
航基の言葉に、和馬も納得したらしい。
苦し紛れの言葉を口にした航基を追求する言葉を口にしない和馬の前でノートを元通りにしまい、大きく息を吸うと、
「でも!」
と言って、明るい笑顔を和馬に向けた。
「さっすがに持ち帰るには重すぎる宿題だから、置いて帰りまーす! カズマっち、寮戻ったらノート見してん?」
「…仕方ない」
両手を合わせてしなを作り、可愛らしい姿に情を転がされた和馬がそう答えると、
「やたっ!」
と、何事もなかったように明るい栗色の髪を飛び跳ねさせたその姿に、和馬は密かな笑みを零したのだった。
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