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はじまりは糸が絡まったように。
春の終わり。
年が改まって四ヶ月以上が経ち、桜が葉桜になっている頃。
そう始まる原稿の中の物語の主人公と同じく、まさに婚約までしていた彼氏に突然、『相手が妊娠したから、俺、責任取らないといけない。……沙都美、別れてくれ』とさよならを告げられた。
しかも、そんな一方的で自分勝手な理由で。
それは、一ヶ月前のことだった。
まだ寒くて、ホワイトデーの時で、バレンタインデーに既製品だけど彼の好きなチョコレートボンボンをプレゼントしたからお返しがあるのかななんて期待していたら、そんな別れを告げられた。
皮肉に言えば、今までのお返しの中でとってもサプライズ感があって、とっても衝撃的で、とっても忘れられない最高な“お返し”。
私は色んな資料が積み重なり、ごちゃごちゃになっているデスクに座り、目の前の原稿に重い溜息をついた。
……別に、どうってことはない。
日常は普段通りに過ぎていくのだから、男と別れて男が出ていったからって、そんなのいつまでも気にしていられない。
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