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門扉を開けて、玄関のドアに手をかける。
それを手前に引き開けると、私は自然に家の中に入った。
「お邪魔します」
先生宅は、いつも私が来るタイミングを見計らって施錠をしていなかった。
不用心と思うけれど、『執筆に集中しているとインターホンの音も聞こえないから出れない』という理由で担当の私のために鍵を開けているらしい。
もう何度目になるのか分からないくらい歩いた廊下を通り、客室の引き戸の前で立ち止まる。
「先生、失礼します」
一言断ってから、私は静かに引き戸を開けて中に入った。
和装の先生が、頭を抱えて真剣な表情で原稿と睨めっこをしていた。
それから私に気付くと、優しい微笑を浮かべた。
「やあ、いらっしゃい」
私は会釈して、先生の少し斜め向かいに座った。
「西園寺先生、進み具合はどうですか?」
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