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だけど、それからの仕事中はずっと雅紀さんとの会話や『西園寺ビル』の内部を反芻していてそちらに気をとられていた。
……うん、分かってる。
仕事に集中しなきゃいけないのに、雅紀さんとの会話がずっと脳内で流れていて、一向に止まらない。
『では、さっそく今月の三連休にデートをしましょうか』
雅紀さんの一節を思い出して、先ほどからずっと“意外”という驚きに似た気持ちを覚えていた。
確かに、“デート”って言ったよね?
なんだか雅紀さんは、私の勝手な想像だけど言うタイプじゃないと思っていた。
“デートしましょう”なんて、一見冷淡に見える眼鏡男子から言われたらギャップというのを感じた。
だからなのか、脅迫よりも今はそういうギャップに気をとられていた。
雅紀さんに対して不思議と、恐怖心とかおどろおどろしい感情は最初のうちはあったけれど、今はそこまで無い。
あるのは……探究心?
……そうじゃなくて、探究心とか今は頭の隅っこに追いやって仕事に戻るの。
戻れ、私。
こんな調子で、会社ではなくプライベートで連休を満喫出来るのか、誰にも分からないことを思いながら仕事のスピードを上げた。
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