860人が本棚に入れています
本棚に追加
「いらないなら、これからもう何も買ってきませんよ。それから私は、私の仕事をしただけです。本の売上が伸びるように工夫するのも私の仕事です。そして会社に貢献して、先生の作品をより多く広める手助けをするのも」
にこりと微笑みながら言うと、先生はどこか諦めたような微苦笑を浮かべた。
「うん、分かってるよ。全ては俺の為だってね。分かってる、分かってるから、さっちゃんっ」
そして、突然どこか張り詰めたような真剣な表情で私に詰め寄る。
っ!な、何?
私は驚いて、綺麗に整った先生の顔から顔を離す。
「な、何ですか?あと、近いですよ。一体、どうしたんですか?」
……まさか、『もう書けないんだ!』とか言うじゃあないよね?
作家も編集者も危機に陥る禁断の言葉を言われるのかと、予想する。
ドキドキしながら先生の言葉を待っていると、先生がおもむろに口を開いた。
「さっちゃん、もう何も買ってこないなんて言わないでっ」
「……えっ?」
必死そうに言われて、私はぽかんとする。
「だから、これからもなるべく、甘いものを買ってきて欲しいんだよ。俺、いつもさっちゃんからの差し入れ楽しみにしていて、それを糧に書く意欲出しているんだ。何もかも君のおかげなんだ。だから、ね、是非ともこれからも甘いものを買ってきて下さいっ」
……あ、あー、なるほど……。
やっと意味が分かった私は、不安そうに私を見て懇願する先生に笑みを向けた。
最初のコメントを投稿しよう!