はじまりは糸が絡まったように。

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「いらないなら、これからもう何も買ってきませんよ。それから私は、私の仕事をしただけです。本の売上が伸びるように工夫するのも私の仕事です。そして会社に貢献して、先生の作品をより多く広める手助けをするのも」 にこりと微笑みながら言うと、先生はどこか諦めたような微苦笑を浮かべた。 「うん、分かってるよ。全ては俺の為だってね。分かってる、分かってるから、さっちゃんっ」 そして、突然どこか張り詰めたような真剣な表情で私に詰め寄る。 っ!な、何? 私は驚いて、綺麗に整った先生の顔から顔を離す。 「な、何ですか?あと、近いですよ。一体、どうしたんですか?」 ……まさか、『もう書けないんだ!』とか言うじゃあないよね? 作家も編集者も危機に陥る禁断の言葉を言われるのかと、予想する。 ドキドキしながら先生の言葉を待っていると、先生がおもむろに口を開いた。 「さっちゃん、もう何も買ってこないなんて言わないでっ」 「……えっ?」 必死そうに言われて、私はぽかんとする。 「だから、これからもなるべく、甘いものを買ってきて欲しいんだよ。俺、いつもさっちゃんからの差し入れ楽しみにしていて、それを糧に書く意欲出しているんだ。何もかも君のおかげなんだ。だから、ね、是非ともこれからも甘いものを買ってきて下さいっ」 ……あ、あー、なるほど……。 やっと意味が分かった私は、不安そうに私を見て懇願する先生に笑みを向けた。
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