凍えた恋心

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凍えた恋心

水族館以来、雅紀さんからは仕事が忙しいのか連絡がなかった。 私も、連休明けからは、連休明け前から話があった先生への記事インタビューの内容を記者と考えたり、新刊のカバーデザインを他社の書籍と被らないよう慎重に先生と話し合ったりと、毎日のように泊まり込みや残業の日々を送っていた。 今日は、そのカバーデザインの事で先生の本の装丁を担当するデザイナーを先生宅に案内する為、駅前まで迎えに行くことになっており、私はその時間になるまで先生宅で待機をしていた。 「デザインは、この前先生が提案したものでよろしかったですよね?」 「いいよ。……今日来るデザイナーさんは、いつもの河合さんじゃないんだよね」 執筆中限定なのか、それとも普段着なのか和装の彼がパソコンに原稿を打ち込みながら、私に訊いた。 河合さんとは、私の会社がよくお世話になるデザイン会社の中でもベテランのデザイナーさん。 主にうちの部署の雑誌や書籍のデザインを請け負ってくれていたのだけれど、数ヶ月前に独立して自分のデザイン会社を地元に設立したので、河合さんは地元へと帰って行ってしまったのだ。
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