ラブレター添削サイト

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「依頼者様 この度は、ラブレター添削サイトを再度ご利用頂きありがとうございます。依頼者様の素直で淡いお気持ちが、より一層濃く色付いていることを文面からくみ取ることが出来ました。お好きになられたきっかけは笑顔。素敵ですね。想い人の笑顔はそれだけで人生を豊かにする。もし、愛が実り、生涯を共にした時に、一番見るお相手様の顔は笑顔です。その笑顔が好きということ、素敵だと思いますーー」 赤の他人に言われるのはいささか恥ずかしいが、実際そうだから仕方ない。あの日、浴衣姿のあいつが俺に向けてくれた笑顔。その笑顔が忘れられない。困ったことにその日からあいつが笑うだけで俺の心は騒がしい。 「ただ、その想いがエスカレートしすぎで相手が一歩引いてしまう恐れがあります。「笑顔がずっと忘れられない」「君だけを見ている」「他の人に奪われるのが恐い」。ロマンティックなフレーズですが、裏を返してみれば、お相手様を自分のものにしたくてしたくてたまらない、ストーカーのような束縛さを与えてしまう恐れがありますーー」 確かに、書き上げた時は情熱のこもった名文だと思ったが、こう他の人の指摘で同じ文体を見ると鳥肌が立つ、というか、身の毛がよだつ。これを本当に俺が書いたのか。 「愛が深いということは悪いことではありません。一方的に押し付けてしまうのが間違いです。愛、言い換えると I 。どうしても、自分が、自分が、となってしまいがちですが。忘れないでください。愛は相手がいて成り立ちます。I (私)、 you(相手) 。その間にLoveが入り、初めて I Love you. 気持ちは伝わるのです。変に着飾る必要はありません。依頼者様の素直な気持ちを文字に乗せてください。お相手様の心にもスッと刻まれることでしょうーー」 素直な気持ち、か。確かにそうだな。等身大の自分の気持ちを伝えよう。以上でも以下でもない、ありのままの俺の気持ちを。 「是非、依頼者様の飾らない素の想いをしたため、再度私に読ませて頂ければ幸いでございます。See you letter. また読める日まで」 不思議と最後のつまらない一文も小洒落たフレーズに聞こえた。
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