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エピローグ〈清美〉
脳の中にずっと誰かの「死なないで!」って声が聞こえ続けていた。誰の声かわからないけれど女子の声だった。
その声が聞こえなくなった。開けなかった目を開けると、爪が食い込むほど強く握りしめていた左手の中に、ちぎったルーズリーフ。
わけがわからない言葉。
確かお正月のテレビ番組『日本中のラーメン屋さんに聞いたプロがもう一度食べたいラーメン屋さんランキング』で優勝したお店。
お母さんとお兄ちゃんと3人で観ていた。
お兄ちゃんが言ってた、隣町だって。
「来年帰ったら三人で行こうな」って言ってたことを思い出す。
わけがわからないまま、鞄の横に落ちていたペンケースの『死ね』という文字が目に入った。
ここで死ぬことはあいつらに従うことになる。そんな終わりは嫌だ!
悔しさと怒りが込み上げてくる。
死ぬのは戦ってからでも遅くない。
*
あのときの謎の声の中に
「お母さん」って聞こえた気もした。飛鳥だったのかもしれない、未来から来た。
そんな映画があった。
だとしたらあの手紙も飛鳥?
あのルーズリーフはお守りだった。今も大切にしまってある。
手紙と言えるのかどうかわからないけれど、私にとっては命を繋いだ言葉。
『明日龍のラーメンを食べる前に死ぬな』
〈fin〉
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