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二階に上がると、廊下があって、左右にそれぞれ部屋があり、その奥にも部屋があった。
その時、強烈な違和感が襲った。
それは・・匂いだ。
普段、渡辺くんの服から漂っている匂いだ。やっぱりこれは家の匂いだったんだ。
決して彼の体臭ではない。
体の匂いなんかではなく、物がずっと同じ場所にあるような匂いだ。
空気が腐っている・・そう思った。
渡辺くんは一番手前のドアを引き、
「どうぞ、何もない部屋だけど」と促した。
彼の言った通り、部屋の中はがらんとしていた。お決まりの年頃の男の人の部屋らしく、ベッドと勉強机に本棚があるだけだ。
本棚には、小説らしきものはなく、子供の読むような漫画本が並べられてあった。何故かどれも古い本ばかりだ。
まるでこの部屋の時間が止まっているように思えた。
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