「渡辺家」

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「どこかに座ってくれていいよ」  私は促される通り、部屋の中央の丸テーブルの脇に敷かれた座布団に腰を下ろした。 「お家の人はいないの?」  私は渡辺くんを見上げて言った。  すると彼はこう言った。 「照れて中々出てこないみたいだね」 「えっ、照れて?」  どういうこと?  言っている意味が分からない。  この時間だったらお母さんとかいるんじゃないの? 母親が照れて挨拶に来ない? そんなのおかしいわよ。  私の疑問を余所に、 「今、お茶を用意してくるよ。そこの棚の漫画でも読んでいて」渡辺くんはそう言って部屋のドアを閉めて出ていった。続けて階段を降りる音が聞こえた。
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