「渡辺家」

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「ゆっくりしていきなよ。時間はたっぷりあるんだからねえ」  時間がたっぷり・・イヤな予感の通り、男は「君はねぇ、これから俺とここで暮らすんだよ」と言った。 「いやっ」自然と声が出た。  私の声が更に男を刺激したみたいだ。  男は「くくっ」と忍び笑いをして、 「言うことを聞く弟で本当に良かったよ」と言った。臭い息がかかる。強烈な匂いだ。 「彼は・・渡辺くんはどこにいるんですか?」  ここから出る望みは渡辺くんしかいない。 「ああ、弟のことか、俺も『渡辺』だから、ややこしいなあ」  そう言った瞬間、部屋の外でドタドタという音が聞こえた。音は近づいてくる。同時に、男が「ちっ」と舌打ちをした。部屋に勢いよく入ってきたのは渡辺くんだ。
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