「渡辺家」

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 おそらく弟の渡辺くんは兄の命令で私に近づき、交際を重ね、安心させた上で私を家に連れて来たのだろう。  それらは全て、兄の命令だったということだ。  男は、何かが原因で幼女の由香ちゃんに絶望し、もっと自分を理解してくれそうな女子高生をターゲットにしたのだ。  兄も頭のネジが外れているが、兄の言いなりになっている渡辺くんにも罪はある。  酷い兄弟だ。  何が兄の心を歪め、何が弟を兄の従順にさせたのか知らないが、私はこんな兄弟に負けたりはしない。  叫ぶんだ!  体は押さえつけられていても、声は出せる。思いっ切り、声を出すんだ。  私は二人が驚くほどの声を出した。  部屋の窓の外は通りだ。  その向こうには私の知っている人がいるはずだ。 「助けてっ!」  私は繰り返し叫んだ。
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