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その声に慌てた男が私の口を塞ぎにかかったが、もう遅かった。
通りから犬の吠える声が聞こえた。
ものすごい声だ。犬の声は止まない。犬の姿は見えなくても、私には分かる。その姿が見える。
夢の中で見た山村くんの飼っている大きな柴犬だ。
「うるせえ犬だな」
あまりの大きな犬の声に男が言うと、渡辺くんがこう言った。
「兄さん。あの時の犬が仕返しに来たんだよ」
あの時の犬?
渡辺くんの言葉に男は何か思い出したのか、
「ああ、公園で犬の餌に毒を混ぜておいて、食べさせた時のことか。あの犬は死んだんじゃないのか?」と言った。
公園で犬に毒を・・
私の飼っていた犬は、少し目を離した隙に公園で何かを食べ、その日の夜に亡くなった。
獣医の人は毒物を口にした、と言っていた。
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