「渡辺家」

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「その犬は、私が飼っていた犬よ」  私が兄弟に言い放つと、渡辺くんは目を丸くして驚きの表情を浮かべ「あの時の犬は、君が飼っていた犬だったのか」と言った。けれど、兄は、「毒を食べる方がバカなんだよ」と罵るように言った。  渡辺くんも知っているということは、それに関わっていたということだ。  二人とも、絶対に許せない。 「今、吠えている犬は、私が飼っていた犬じゃないわ。私の犬はあの日、死んだのよ」  そして、こう続けて言った。 「犬が吠えているのは、仕返しでも何でもないわ。あなたたちを捕まえるためよ」 「何をバカなことをっ!」  男がそう言った時、渡辺くんが震えるような声で、 「兄さん・・に、人形が・・」と言った。 「はぁ? 人形だと?」男が言った。  だが、弟の指す方向を見た時、男の目が静止した。  そこにはゴシックロリータ調の球体関節の人形がいた。
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