霞んだ春を

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 一度目を瞑り、ゆっくりと開ける。 先輩の笑顔が健在なのを確認すると、私も何事もなかったかのように、先輩の隣のブランコに腰を下ろした。  私がブランコに乗ったのを確認すると、それに合わせて、先輩がブランコをゆっくりと漕ぎ始める。 キーッ、キーッ。 錆びた鉄が擦れ、漕ぐたびに不協和音を奏でる。背筋がぞっとするような、高くて鋭い音。それを大して気にはしていないらしい先輩は、漕ぐのをやめない。 むしろ徐々に、ブランコを漕ぐ力を強めていく。 乗ったままで漕ごうとしない私に、先輩が声をかける。 「漕がないの?涼しくて気持ちいいよ、これ」 そしてまた強く、ブランコを漕ぐ。  先輩の漕ぐ力が強まるにつれて、先輩の体は高く持ち上がる。 その様子を見て、何故だかそのまま、先輩がどこか遠くへ行ってしまうような気がした私は、慌てて、一緒になってブランコを漕ぎ始める。 私がブランコを漕ぐと、先輩の高さに近付くことができる分、奏でられる不協和音は余計に大きくなる。  立ち止まったら離れて行って、追いかけたら歪みが生じて。 どうするべきか分からず、私は前後する先輩の姿を追いかけるように、ただぎこちなく、ブランコを漕ぎ続ける。 何が正解か、分からぬまま。 その正解を、探しながら。
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