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休日のショッピングモールは、小さな子供連れの家族で賑わっていた。この日のイベント会場には、大きな家の形のバルーンアトラクションがメインに据えられ、横にはボールなどで遊べるスペースも設置されている。 小学校に上がる前くらいの子供たちが、歓声を上げながら走り回り、カラフルなボールを投げ合い、ぴょんぴょんと飛んで跳ねる。横では買い物に疲れた親たちが、傍にあるベンチで見守っていた。 その中に2歳くらいの子ども2人がいた。そっくりだが、よく見ると1人は意思の強さを思わせる太くりりしい眉を持ち、もう一人は少したれた目が優しい雰囲気を醸し出していた。 川本隼人・悠人。双子の兄弟だ。 2人はボールを集めて遊んでいた。両親の慶太と舞衣もまた、他の大人たちのように、ベンチで休んでいる。 「悠人のやつ、ずいぶんゆっくりだな。じっとボールを見たりなんかして。色とか形とか、悠人なりの判断基準でもあるんだろうな。隼人は一気にたくさん運ぼうとしてる。せっかちでよくばりなやつだ。双子なのに全然違う」 慶太はあきれたように笑った。 「ほんと、おもしろいわね。ほら見て、隼人が悠人にボールを渡してる。1つしか持ってないから、かわいそうに思ったのかしら。──あっ」
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