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「男子と仲良くなると女子がヤキモチやくんじゃないか?」
「そうね、令ちゃんモテるから。」とお袋は相槌を打ち夫婦そろっての親バカっぷりを披露していた。
実は今日、川端先生には少し彼女の様子をみたいと言っていた。
「仲良くできればするけど、なんだか友達を必要としていない気がするんだ。」と俺は親に相談するかの様に川端先生に伝えた懸念点を述べた。
実際、俺の両親は相談者として十分機能し得る存在だった。親父は藤沢にある高校で教頭を務め神奈川県の教育委員会の幹部に従事していたし、元教員の母は茅ヶ崎市役所の青少年お悩み相談室の室長だった。
俺がそう伝えると二人はハッとしたように目を合わせた。相変わらず夫婦の仲が良いなと思ったが気になったので仕方なく質問した。
「もしかしてこっちに引っ越して来たのは家庭の問題なの?」
父親は一口ビールを飲んで答えた。
「うーん。まだあんまりよくわかってないんだ。神野先生には南湖の忘年会で会うと思うからちょっと聞いてみるよ。令、今は冬だから観光客は少ないけど春になるとぐっと増える。いつも一人でいると危ないからいざとなったら守ってやるんだよ。」
俺は今度はすぐに「うん。」と言って、お袋に質問した。
「そういえばどうして神野さんの事を俺に聞いて来たの?」
お袋は彼女が働く青少年相談室に海辺に遅い時間までよく一人でいる少女がいると通報があった事を教えてくれた。調べたら西濱小五年生の神野美香だとわかり、俺が知っているか聞いたようだ。
青少年相談室は中々役立っているじゃないか。海水浴場は確かに観光客も多いし、一人で遅くまでいると危ないな。
俺は様子を見るのにもう一名人員が必要だなと茅ヶ崎の海水浴場を一望できるロケーションに住んでいる和希(トモキ)に相談しようと考えていた。面倒見がよい彼ならきっと親身になってくれるだろう。実際、名前でからかわれていた時に彼女を助けていたのを目撃した事があるし。
和希の両親はガイドブックに載るくらい流行っている飲食店を海水浴場近くで経営している。周りからは裕福に見えたが、学生結婚だったらしく昔は大変だったそうだ。
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