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プロローグ
「千秋くんっ、やっと見つけた!」
後ろから歓喜に満ちた高い声が聞こえ振り向く。
うん、可愛い。
すっかり慣れた光景に、自然と口が吊り上がった。
「もう、講義室で待っててって言ったのに」
「ごめんごめん。でもこうして君が探してくれるのわかってたから、つい意地悪してみたくなっちゃって」
「っ!!」
目を狐みたいに細めて、唇は緩いカーブを描く。
君、俺のこのカオ好きだろう……?
「ち、千秋くんってば!ほんと意地悪なんだから!そ、そこがいいんだけど……っ」
うん、知ってる。
君の照れた顔可愛くて好きだからコレは君専用のカオ。
まあ本当は待つの嫌いだから適当に散歩してただけなんだけどね。
だってただ待つだけなんて、つまらない。
「これっ、渡したくて……!」
「?これ……マフィン?君が作ったの?」
「うん。私お菓子作りが好きで……その、作りすぎちゃったからお裾分けっ」
「……へぇ。ありがとう、とても美味しそうだよ」
貰ったからにはちゃんと返さないとね。
ほら、君が大好きな……とはまた違う、とびっきりの笑顔。
「……っ!!えと、じゃあそういうことだから!恥ずかしいから1人で食べてね!感想とかもいらないからっ」
何かに焦ったように捲し立てて、パタパタと駆けていく彼女。
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