課題

3/3
前へ
/73ページ
次へ
 しかしぼんやりしていてはいつまでも彼のもとに帰れない。 そう感じた私は、とにかく前に進めるようその方法を彼女に聞いた。 「麒麟様、ひとつだけ教えてください・・・ その方が真の力の持ち主だと、どのように判別すればいいのですか?」 「手を握るのです。 そして貴女の想いをその手に込めたとき、もし有力者であれば手のひらに印が現れるはずです」 「しるし?」 私は自分の手のひらをじっと見つめてみた。 「では、試してみますか? 太賀、貴方の手を貸してあげなさい」 麒麟様に指示されると、彼は右手を差し出してくれた。 私は彼の大きな手を自分の両手で包み込み、『あなたは浄化力の持ち主ですか』と心の中で尋ねてみた。 しかし何度手を握ってもそこに印らしきものは見えなかった・・・。 「う、う、ゴホン!」 太賀さんは無理な咳払いをして合図した。 俺は違うと・・・。 「あ、ごめんなさい!」 私はその手をパッと外した。 「では、次は私の手を握ってみますか?」 麒麟様も手を貸してくれた。 彼女の手は見るからに白く綺麗な指をしており、触れると一瞬で吸い込まれるほどに気持ち良かった。 するとまだ何も聞いていないのに、彼女の手のひらには龍のような絵が現れた。 「もしかして、これですか?」 「そうです。これが浄化の刻印。これを持つものを9人集めなさい。 そして貴女の願いが叶った時、ここでの修業は終わりです」 「願い??」 「そう、課題を見事クリアした時、あなたの願いがひとつだけ叶えられるのです。 それがこの修業の報酬・・・」 「報酬?」 願いが一つ叶う?なんでも?? いやいやそんな報酬をもらえるということは、この課題がどんなに難しいかを示している。 私は報酬なんていらない! 紗倉の奥様になれるよう、自信を持てるよう、この力をうまく使えるようになりたいだけなのに! 「麒麟様!一つだけ気がかりなことがあります。 私は、自分の力を磨きコントロールできるようにとここへ参りました。 この課題をクリアした時、それはできるようになるのでしょうか? 当初の目的が果たせないのならば、ただ彼を待たせてしまうだけではないかと不安で・・・」 麒麟様は泣きそうな私に優しく語り掛ける。 「貴女の力は今、ゴツゴツした原石のようなもの。 勢いのままに形を創ろうと無理にぶつければ、貴女のほうが割れてしまいます。 だから少しずつ削って角のない丸い形にする必要があるのです。 ほら、この龍が抱えている丸い球のように・・・」 麒麟様が指さす方には、池の中央で透き通る水晶を抱えた龍の彫り物があった。 「貴女がこれから探す彼らは、その役目を担ってくれるでしょう。 真の浄化力をもつ者同士、触れあっていくことで角が削られていくのです。 限りなく究極な丸に近づくことができれば、貴女の力は完成といえる、、、 つまり、葉羽の言う、力を磨きコントロールすることが十分にできるようになるということです」 そっかぁ、、、では私がこれにチャレンジするのは必須ということ・・・ 楽な修行なんてない、こんなことで躊躇っているようでは、最初から修業したいなんて口にしてはダメなのよ!! 私は彼と約束した!強くならなければ、国へは帰れない!! そして私は決意を新たにした。 「わかりました・・・。 ここに9人集めてみせます。それが私の自信になると信じたいから・・・。 そして今よりもっともっと強い人になれるように頑張ります!」
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加