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初那は実家の家業の手伝いがあり、いつもお寺にいるわけではない。
その日は結局3人だけが修業に参加し、ほぼ大半を瞑想し、力を集中させる訓練をしていた。
「はぁぁぁ、疲れたぁ!」
修業が終わると、壱悟くんは講堂で大の字になって寝そべった。
仁胡は朝のことが気まずいようで、終わると同時にイソイソと部屋に戻ってしまった。
なんか、悪いことしちゃったな・・・
そう思いながら、ふと寝転がる壱悟くんに目を移すと、チャンス到来の鐘が鳴った!
彼は目を閉じ、完全に気をゆるしていた。どうやら眠っているようだった。
私は彼を起こさないようにそっと手に触れた。そして念を込めると、そこにはぐるりと円を描いたような、風車らしき刻印が見えた。
やった、二人目発見!!
そう思うと、ふいに喜びで顔がほころぶ。
「え?葉羽って俺のこと好きなの?」
ハッと顔を挙げると、彼と目が合いドキッとする。
「あ、あのね、、、、壱悟くんの手が、私の大好きな人の手に似てたから、つい触ってしまった・・・失礼だったよね、、、、ごめんなさい・・・」
私は咄嗟に思いついた嘘でごまかした。
きっと彼も仁胡と同じように、説明したところで不思議な顔をすると思ったから・・・
しかし大変なことに、彼の顔つきが変わった。
壱悟くんは、真剣なまなざしでゆっくり起き上がり近づいてくる。
私はどうすることもできずに、そのまま後ろに尻もちをついた。
「葉羽、、、寂しいの? 俺が抱きしめてやろうか?」
え??えええ―――――???
この急な展開に驚き、ゆっくり首を横に振るが、まっすぐなまなざしの彼に負けそうになる。
神様―――――助けてください!!
シュルルルル――
ズコ―――ん!!
するとこの想いが神に届いたのか、どこからともなく横笛が飛んできて、彼の頭を直撃した。
「いってぇ!!!!」
彼はぶつけられた頭を抱えて、床を転げまわった。
「まったく、そんなことばかり考えてるから、いつまでも力が濁ってるんだよ!」
助けてくれたのは、昨日少しだけ挨拶した九雀さんだった。
「いや、誤解ですって!!
瞑想は真面目にしたわけで、たまたま葉羽が寂しそうな顔してたから力になってあげたいなと・・・」
「ふーん、はたから見れば、おびえる兎をオオカミが狙ってるようにしか見えなかったけどね。
あぁーあ、大事な大事な横笛さん。痛かったですね」
「いやいや、痛いのは俺の方ですって!」
九雀さんは飛んでいった横笛を拾い、大事そうに懐にしまうと、さりげなく手を貸してくれた。そして彼にグイっと引き上げられ立ち上がると、背中を押されて私は講堂を出た。
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