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Face to Face
私は、国の皆に温かく見守られながら出発した・・・
その道のりは思ったより遠く、婚約者の言った通りすぐには帰れない距離なのだと思うと、溢れ出しそうな寂しさをぐっとこらえる。
彼の友人が住む街までは、緋色さんが付き添い、案内してくれた。
彼は私と同じように特殊な力をもっている。
この力のことが発見されたばかりの頃、私は得体のしれないエネルギーを抱えていることに大きな不安があり、彼はそれを優しく導き支えてくれた存在。
ただ、、、少し変わったところがあり、彼は女装が趣味。しかも紛らわしいことに、彼は体の線が細く、お化粧も上手で、いつも洒落た美しい柄の羽織物を着ている。
髪は肩にかかるくらいのサラサラで言葉遣いも綺麗。
その容姿にうっとり見惚れてしまった私は、完全に女性だと勘違いをしてしまっていた・・・。
だから、それに気づいた時には、大きな悲鳴をあげ、みなさんに御心配かけてしまう始末・・・
あぁ、今でもあの時のことを思い返すとお恥ずかしい・・・
まぁそんなこともあったけど、彼は特殊な力においては大の先輩!
しっかり技量を磨かせてもらい、ここまで頑張ってこれたのも彼のおかげです・・・・
そんな懐かしいことも思い返しながら長い旅路を進めていくと、いつの間にか小さな町にたどり着いた。そこは新緑豊かな山の麓に栄える町で、その中心には大きな滝が流れていた。私はそこから溢れ出る物凄いエネルギーに言葉を失いそうになる・・・
一歩一歩、その滝へと距離を近づけるたびに心が真っ白に洗い流されるようだった。
そしてその衝撃を落ち着かせるために、大きく深呼吸をする。
「あの滝だよ、あそこから異常なほどにパワーが溢れだしているんだね」
緋色さんは立ち尽くす私にそう説明してくれ、二人はしばらく降り注ぐ力をその身に浴びていた。
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