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ツンツン・・・
誰かに指を突かれた気がして振り向くと、そこには同じ年くらいの女の子が首をかしげて立っていた。
「もしかして、貴女が葉羽さん?」
突然その娘に名前を呼ばれ、私は驚き返事する。
「はい、そうですが、貴女は?」
その娘はにっこりと笑顔を見せると、ペコリと深くお辞儀をした。
「私は、麒麟様のもとで見習い修業をしている、初那と申します。
はるばる遠いところをご苦労様でした。
私が麒麟様の御寺までご案内いたします!」
そんな丁重な挨拶をされるとなんだか恥ずかしく、私も同じように深いお辞儀を返した。
「私はソレイユ国より参りました葉羽と申します。
不束者ですが、一緒に修業させて下さい!」
彼女は、キョトンとした表情で顔をあげる。
その愛らしい姿は私の緊張をスルスルと解いてくれた。
そして目が合うと、何となく意気投合した感じでお互いに笑ってしまった。
「フフフフ、面白い方ね。
私はてっきり高飛車な女性が来るんだと思って、これでも朝から緊張してたのに!」
彼女は急に距離を縮めたかのようにフランクに話し出した。
私はそれが全然嫌ではなく、むしろ昔から知る友人と話してるように嬉しかった。
「ごめんなさい、そんな器じゃなくて・・・。
あなたは初那さんって仰るのね。何歳?」
「私は未熟者の17です」
「そうなんだ、私も未熟者の17歳。同じだね」
「そうなの?!
あの寺はね、男ばっかりで正直、嫌気がさしてたのよ!
葉羽ちゃんと一緒に修業できるなんて、すっごくすっご―――く嬉し、、、」
ゴツン!!
その時、体格のいい男が背後から近づき、小さな彼女の頭に軽くゲンコツを当てる。
私は一瞬、この人が敵なのか味方なのかと、瞬きもせずに固まった。
「おい、初那! 馴れ馴れしくするなってあれほど言っただろうが!
まったく油断も隙もありゃしない・・・」
「いったぁ――――い!女の子に手を挙げるなんて、サイテー!
麒麟様にチクってやるう!」
初那ちゃんは頬を膨らまし、振り返りながら睨みつけた。
その大きな人は、固まる私と目が合うと律義にも深く一礼された。
「初めまして、葉羽様。
私は麒麟様の側近をしております、太賀と申します。
まだ修業見習いなゆえ、この娘の軽率な態度、何卒お許しください・・・」
「いえいえ、とんでもないです!
私はここに来るまですごく緊張していました。
これからどんな人と出会い、こんなことが起こるのか・・・。
だけど、彼女の可愛い笑顔が、その緊張も一気に吹き飛ばしてくれたのですよ。
どうか責めたりなさらないでください・・・」
「失礼でないのなら安心しました。
では、麒麟様がお待ちですので案内いたします・・・」
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