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太賀さんに連れられ、さらに15分ほど坂を上ると、なんとも奥ゆかしい寺院があった。
寺院のあちこちには、龍や獅子といった伝説の生物の美しい彫刻があり、中央の池にはキラキラと輝く石が敷き詰められており、反射した光が水面に映えるなど、見るものすべてが感動に包まれた。
は異空間にでも足を踏み入れた気分で、またも言葉が出なかった・・・。
その時、池の近くに美しい立ち姿の人がいた。
質素な柄の羽織物から、それはきっと男性だろうと思うけれど、そのなんともいえない魅力に一瞬で引き込まれそうになり、私は彼から目を離せなくなった。
そしてふと視線が合うと、彼のほうから軽く会釈をしてくれた。
・・・何か話したい!
そう思い、咄嗟にその人に声をかけようとした瞬間、太賀さんが池とは反対側にあった部屋の戸を叩いた。
トントン、、、
「麒麟様、葉羽様をお連れしました・・・」
中からは可愛い声がし、誘導されるままに部屋に入ると、色彩豊かな衣装をまとった煌びやかな女性が奥に座っていた。
「よくお越しくださいました。私が麒麟と申します。
これからしばらくの間、厳しい修業になると思いますが、少しでも貴女の力が開花し、その身に備わるよう期待しております」
その部屋に一緒に入った人たちは板の間に並んで正座すると、深々と頭を下げた。
私はひとり出遅れて頭を下げたが、、、、何かが違うと首をかしげてしまった。
「葉羽、どうしましたか? 何か不服のある顔に見えますが・・・」
麒麟様はそんな私を見逃さなかった。
私は初っ端からこんな失礼なことを言ってもいいものかと躊躇ったが、それでも心の中の違和感をぬぐいたい衝動に駆られた。
「失礼しました、麒麟様・・・。
あのう、そのう、ちょっと言いづらいことなのですが・・・」
「ちょっと、葉羽ちゃん!こんなところで何??
言いたいことあるなら、ここを出てから私に言って!」
思いがけない私の言動に、突拍子もないことでも発言するのではないかと緋色さんが焦りを見せた。
「すみません・・・。
あのう、私にはどうしてもこの方が麒麟様だと、、、、納得いかなくて・・・」
「はぁ?なにそれ!!このまま追い払われたいの?」
彼の反応をみるなり、やはり私の直感は間違いだったのだと、ガッカリ視線を落とす。
そんな私に、奥にいた女性はもう一度問いかけた。
「葉羽、私が麒麟でないとなぜ思う?」
私はここまできたら後には引けなかった。ただの勘違いだなんて、失礼すぎる。
そう思うと、思うままに彼女へ伝えた。
「・・・・それは、浄化の力を感じないからです。
私は、婚約者である紗倉より、麒麟様とは浄化の力をその高みにまで清めあげた素晴らしい方だと聞いてまいりました。
貴女様もおそらく浄化の力をお持ちでしょうが、失礼ながらそんなに洗練されておられるように感じないのです・・・。だから、、、、、だから・・・」
言葉に詰まりかけたとき、隣にいる緋色さんがあんぐりと口を開けている姿が視界に入ってきた。私はその様子を見て、やってしまったとばかりに自分の発言を反省する。
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