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「よくわかりましたね、それでこそ、紗倉の選んだ女性・・・」
その時、入口から違う声がし振り返ると、まばゆいほどの光とともに、先ほど池の傍に立っていた男性が入ってきた。
そして私の前でゆっくり腰をおとすと、ガラス玉のように澄んだ瞳で見つめられた。
私はその目を見た瞬間、強く吸い込まれる感覚に捕らわれ、間違いなくこの人だと確信した。
「私が本当の麒麟です。はじめまして、葉羽。貴女が正解よ」
やっぱりそうだった!!!
私はそれを聞いた瞬間、すごく嬉しかった。そしてホッとすると目が潤むのがわかった。
「あぁ、よかったぁ!
私、修業もしないで追い出されちゃうのかと泣きそうでした・・・」
そのときふいに、私は彼女の腕の中に包まれた。
何とも言えないいい香り、、、細くやわらかな体、、、もし私が男ならば、一瞬で彼女に恋してしまっていたと思うくらいに・・・。
「ごめんなさい、試すようなことをして。
紗倉があまりにも貴女のことを褒めるから、どれほどの力量か知りたかったの」
「あぁ、やはりあなたが麒麟様なのですね・・・。
私は先ほど通りすぎた一瞬で、貴方に心を奪われてしまいました・・・。
私の勘は間違ってなかった・・・こんなに素敵な方とお会いできて光栄です」
「私もですよ。貴女と目が合った瞬間、不思議な力に捕らえられました。
このまま紗倉の元に返したくなくなったら、どうしましょう。フフフ」
包まれた腕の中で顔をあげると、彼女は女神のように優しく微笑まれた。
「はぁぁぁ、見事合格なのね、焦ったわぁ・・・・!」
緋色さんが私たちの様子を見て、安心したように笑みを見せた。
「あれ? 緋色さん、もしかして御存知だったんですか?」
「知ってるも何も、麒麟さんは私の師匠よ!
彼女の悪戯好きなのも全部知ったうえで、乗っかったの!演技よ、演技!!」
するとその場に居合わせた人たちも皆、ほっと胸をなでおろした表情をしていた。
「え??」
騙されていたのは私だけだった。それに驚きすぎて目をパチクリさせた。
それならばこれだけは確認しておかねばと、私は意を決する行動に出る!
「麒麟様、失礼なのは重々承知の上で、ひとつだけ、確認してもいいですか?」
彼女は何を言い出すのだろうと、抱きしめていた手を緩め、体の間に少しの距離をとった。
私は首をかしげる彼女の胸に両手を押しあてる。
「ひやぁぁぁ!!何?何???」
それに驚いたのは、緋色さんの方だった。
だけど、私がこんなことをせねば気が済まないのは、まぎれもなく彼のせい・・・
相手が衣装や身なりで性別がつきにくい時には、とにかく確認してからでないと安心できない、、、私は過去の失態からそう学んでいた。
「あれ?胸がある・・・」
確かに私の両手には二つの柔らかいモノが触れた。
その姿勢のまま固まり、彼女の顔を確認する。
「フフフフフ、私は女よ!心配しないで!」
麒麟様は呆気にとられたような顔をし笑った。
「はぁぁぁ、よかったぁ。
紗倉からは女性だと聞いてたのに、この衣装はどちらとも取れますから・・・
確かめておかないと、また緋色さんの時みたいに立ち直れなくなると思って・・・
本当に失礼なことをしてごめんなさい・・・」
私は安心した一方で、無礼な態度を真摯に謝罪した。
「ははん、緋色。彼女に何かしましたね?
悪戯まで私の真似をしなくともよいのに!」
緋色さんは師匠の手前、自分のやらかしたことまでバレて気まずそうな顔をする。
「葉羽、私はいつの時も貴女の味方よ。貴女を導き、支え、そして鍛えていきます。
どんなことがあろうとも、私を信じてついてきなさい」
まだここに到着して間もないのに、女神さまのような彼女に出会い、私は安らかで清らかな優しい感情に満たされるのがわかった・・・
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