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「あれ?ガキばっかりふけって、何してんの?」
その時、急に声をかけられたのは、日に焼けた風の色黒の男性だった。
「あぁ!!広呂さん!!お疲れっす!!」
「あれあれ?
見たことないお嬢ちゃんが一人・・・どこで口説いてきたの?」
その男性は腰を曲げ、私に顔を近づけると、まじまじと見つめる。
「ふふーん、超かわいいでしょ?」
壱悟くんがなぜか自慢げな表情で紹介してくれた。
そして仁胡くんは私の目の前に背中を向けて立つと、彼から見えないように隠した。
「もう終わり」
「は?なんで?」
「減る」
「はぁ??なんだそれ??
へぇ、もしかして・・・」
広呂さんは何かを察したかのようにニヤリと笑った。
「違いますよ!彼女には婚約者がいるんです。
だから広呂さんの出番はありません!!残ね――――ん!!!」
相棒が割って入るのにもかかわらず、少しの愛想笑いもしない彼の頬を、広呂さんは両手で引っ張る。
「おい、仁胡!綺麗な顔してるのに、もう少しかわいい顔、できないのか?
麒麟さんが言ってただろ?
心が穏やかでないと、きれいな力は生れないって!」
そう言われても尚、彼はピクリとも笑わない。
「ふん、困ったやつだな。ねぇ、葉羽ちゃん!」
彼の後ろで油断していた私は、急にひょこっと飛び出した広呂さんの顔に驚いた。
「え?どうして私の名前を?!」
「そりゃ、来る前から楽しみにしてたんだもん。宜しくね!」
彼は八重歯がきらりと光る爽やかな笑顔を見せると、軽くウインクをした。
するとその下から、もう一つ見たことがない顔が飛び出した。
「僕は九雀。はじめまして」
「ひゃっ!!」
私はびっくりして思わず、後ろに仰け反った。
「おい、九雀!お前いつからそこにいた?
しかも初対面で呼び捨てなんて馴れ馴れしいぞ」
九雀といわれる男性は、背は小さめであったが、まるで紗倉が小さくなったかのように、髪形も着ている服もそっくりだった。
「え?紗倉??」
「ん?紗倉??って誰?」
思わず口走った名前に、皆がキョトンとしていた。
「あ、ごめんなさい。
九雀さんは私の大事な人にそっくりだったので・・・」
「へぇそうなの?世界には自分に似た人が2人、3人いるっていうしね。
ねぇねぇ、じゃあ、こいつみたいにいつも不愛想で笑わない奴とかもいるの?」
広呂さんが面白そうに質問する。
「えぇ、、、と・・・」
「うるさい!」
笑われた仁胡くんはまたイライラを顔に出していた。
「まぁ、そんなカリカリすんなって。人生朗(ほが)らかにいこうぜ!
今日はイライラが緩和する特性ミルク料理を作ってやるからさ」
広呂さんはそんな後輩の肩にポンと手を当てると、九雀さんと仲良さそうに反対側へ向かって歩き出した。
そしてだいぶ先の方で、分厚い本を手にした背の高い男性と合流する。それを遠目で確認した初那ちゃんが急に騒ぎ出した。
「ごめん、葉羽ちゃん!!私ね、ちょっと急用を思い出した!」
顔を真っ赤に赤らめた彼女は、そのまま3人のほうへと走っていく。
「おい、初那———!!ちょっと待てよ!!」
そのあとを、壱悟くんが軽快に追っていく。
残された私と仁胡くんはその場にポツンと立ち尽くした。
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