課題

1/3
前へ
/73ページ
次へ

課題

『葉羽ちゃん、寂しさを乗り越えてがんばってきてね。より一層女として磨きのかかった君に会えるのを楽しみにしてまーす・・・あなたのパートナー、緋色より』 散歩から戻ると、緋色さんは置手紙を残して先に帰ってしまっていた。 聞きたいことがいっぱいあったのに、、、 本当に一人になったと思うと、急に寂しさが溢れだした。 「何?もしかして婚約者からのラブレター?」 私は、女性同士ということで初那ちゃんと相部屋だった。 彼女は手紙を覗き込みながら心配そうに声をかけてくれる。 「これは、さっきまで一緒に居た緋色さんから。 初那ちゃん、急用は大丈夫だった?」 「こらこら、初那って気軽に呼んで! もう同じ立場だし、女同士だしね! そうそう、さっきはごめんね。実は私、憧れの人がいてさ・・・」 そう話しながら彼女は急に顔を赤らめ、恥ずかしそうに俯く。 その時私はピンときた! 「もしかしてあの背の高い人? 彼とは話せたの?」 「うん、ちょっとだけね・・・。 彼はすごく真面目で寡黙な人だから、一緒にいてもあんまり会話はないんだけど、、、、 一目見れるだけでもしばらくうっとりできちゃうの!おかしいでしょ、フフ」 彼女は幸せそうににっこり微笑んだ。 「そっか。初那、すごく可愛い、、、その恋、実るといいね」 「うん。でもね、いっつも肝心な時に壱悟が邪魔するのよ!」 さっきの乙女チックな表情から一転し、彼女はモヤっとした顔を見せる。 私はちょっとだけ気になったことを聞いてみた。 「最初はね、私、、、あなたは壱悟くんと仲いいんだと思っちゃった・・・」 「壱悟ねぇ、、、彼はあんなお茶らけてるけど、すごく有能なの。 だから、私なんかにはもったいない・・・」 わぁああ、、、みんないろんな思いがあるんだな・・・ まだたった数時間しか滞在していないけれど、ここにはいろんな恋模様が渦巻いているんだと思うと、いつもの調子でつい口走ることだけは避けねば! 「葉羽は?今までにどんな恋愛したの?さっきの婚約者の話、、、もっと聞きたい!!」 初那はキラキラした表情で私の恋愛について質問する。 いつもいっぱいいっぱいで、誰かと恋バナすることが苦手な私は、この場をどうにかすり抜けたいと思ってしまった・・・。 トントン その時ナイスタイミングといわんばかりに、誰かが部屋の戸を叩いた。 「葉羽様、麒麟様がお呼びです・・・」 それは太賀さんの声だった。私は逃げるように部屋を飛び出した。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加