お姉ちゃんを救う道

1/1
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

お姉ちゃんを救う道

気が付いたら12年たっていた。 あっという間だった。 本庄弘樹26歳 大手企業に勤めるサラリーマンである。 僕には毎日欠かさないで行っていることがあった。 それは小学6年生のころの自分に手紙を送ること。 毎日新しい記憶が入り、僕の最初の頃の記憶は埋もれてしまった。 それでも変わらないことがある。 お姉ちゃんを救いたい。 だが、何をしても救うことはできなかった。 僕が逃げ出してみたり、児童館に1日二人で立てこもったときもあった。 何をしても、お姉ちゃんは死んでしまうのだ。 僕が止めてもそれをかわして死んでいく。 まるで死に方をわかっているかのように。 それでも僕はあきらめずに手紙を書いていた。 しかし、あるとき疑問が芽生えた。 お姉ちゃんも手紙を受け取っているのではないか。 どんな手紙を受け取っているのか。 それを聞き出すように昔の僕に探りを入れるように仕向けたが、それでもお姉ちゃんは教えてくれなかった。 朝の動きを観察するようにも伝えると、ポストへ行っていることが判明する。 手紙を確認できる! そう思ってポストを開けてみると、中は空だった。 お姉ちゃんしか見れないようになっているのかもしれない。 僕は宛先じゃないから。 お姉ちゃんに手紙を送ってみるのもありかと思ったが、それは送っても届かなかった。 自分にしか届かない。 2008年7月10日くらいに手紙を飛ばしたこともあったが、それでもだめであった。 いったいどうしたらいいんだろう。 お姉ちゃんは、どうやっても死んでしまうのだろうか。 これは寿命なのだろうか。 でもそれじゃおかしい。 お姉ちゃんは未来の自分から手紙を受け取っている。 ということはお姉ちゃんが生きている世界も存在している。 ではなぜ、その世界から死なせるように仕向けたんだ。 ー僕のため? 新しい世界でもし僕が死んでいるのであるならば、お姉ちゃんは僕を救いに来ているのだろうか。 自分が死んでも、そこまでして僕を守りたいのか。 あ、そういうことか。 僕は分かってしまった。 解決方法を。 なんで気づかなかったんだろう。 僕は本当に馬鹿だ。 ーお姉ちゃんに守ってもらうんじゃなくて、 殺されればいいんだよね。 僕は自分の死を覚悟して、手紙を書き始めた。 すごく長い手紙を。 宛先は? 2006年7月20日の僕。 小学4年まで遡って、悪い子を演じる。 すべてはお姉ちゃんに嫌われるために。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!