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第三話 理不尽から始まったことの結果は理不尽しかないし、自分から始めたことには何かを変える道筋が見えるとは限らない。
前回あらすじ、助けた魔女カルアの村にお礼をしたい名目でつれてかれたものの、村長のベルニカに理不尽なことを言われ対決することになった。
「さぁ、始めるかのぅ。カルアたんのエッティ下着姿を見たことを後悔させてやるのじゃ!」
巧海は、気合いを入れ直すために足を踏み込み、
「絶対に勝ってやる!」と意気込み構えをとった。
「龍神拳 六ノ型 鋼龍神の構え。」
その構えの名称を聞き、型を見るとベルニカは、
「あの構え、そしてあの名称……何処かで聞いたことあるし、見たことあるようなぁ……うーんいつじゃったかなぁ?いや、考えるのはよそう。それよりはカルアたんの下着姿を見た件だ。絶対後悔させてやるのじゃ!」
「それでは!お互い対決準備整ったのでぇ。開始です!」カモミルは旗を下ろし開始の合図を知らせた。
「さぁ、考えても仕方ないのぅ。では行くぞ!」
ベルニカは目を閉じて集中し詠唱を開始した。
「逆巻け、逆巻け。時の針を戻すかのように。切り裂け、切り裂け。首を刈るかのように。」すると風が空気を切る音が聞こえ竜巻が発生した。
「彼の者を切り伏せろ!切り裂き魔の竜巻」激しく唸る竜巻が巧海を襲う。
「おおっと!ベルニカ村長の渾身の風魔法を放ったぁぁ!これは、巧海選手耐えきれるかぁ?」
すると、巧海は構えから技を繰り出し始めた。
「龍神拳奥義 鋼龍神 鋼魔絶壁」全体を鋼に変えた。
「やはりな。あの技は古来から伝わりし龍神拳。彼のものは、あの伝説の種族か。」とベルニカは感ずいたにも関わらず、
「はぁ、この程度の攻撃力か。大したことねぇな。」と竜巻の切り裂く攻撃を耐え続けている。
竜巻がやむと、巧海は無傷で出てきた。
「おぉぉぉっと!!!巧海選手耐えきったぁぁ、て言うかほぼ無傷です!しかし包帯を巻いていたところが露になってしまったぁぁ。」包帯を巻いていた、両腕と腹回りに巻いていた包帯が無くなり、龍の頭の痣と鱗が見えてしまい、村人の一人に、
「あ、あいつ!?龍神族!それにあの痣は長の証!生き残りがいたのかよ。」
「嘘でしょ!?でも、あの実力あの魔力量。疑う余地はないわね!」魔法使いや魔女達がざわめき始めた。
「皆のもの静まれぇぇぇぇ!」ベルニカの叫びでざわつきがおさまった。しかし、
「なぜ自分の種族を黙っておったのだ?」
ベルニカは巧海に問う。
「俺がこの世界全体に嫌われ妬まれていることを知っていたから。」
「そうか。確かに、おぬしの一族は我々も妬んでおった。何しろ、我々はもちろん、他の種族の魔法をことごとく無効化するどころか喰し、自分達の糧にしたり、世界滅ぼすレベルの威力をバカスカ撃ちまくるし。しまいには、全属性の魔法に対応ってチート過ぎにも程があんだろうが!!!」
最終的に愚痴っぽい感じに言われたが、ここで一族がバレた以上、どうしたものかと考える前に、勝負は巧海の勝ちではあるが、ベルニカは、
「勝負はおぬしの勝ちではあるが、おぬしの一族を聞いて気が変わった。今ここでお主を始末する。」ベルニカにつれて複数の魔法使いと魔女が魔法を詠唱し始めた。
「茨の鞭によりその罪を断罪されよ!薔薇の断罪鞭」
「流星の裁きにより圧殺されよ。流星雨潰し」
「彼の者を縛り、動きを封じて彼の者の守りを解け!鎖縛り魔法解除」巧海は、鋼魔絶壁を解かれ四肢を縛られて、無抵抗の状態になり、茨の鞭に打たれ、隕石の雨に叩き潰された。
「ぐはっ!ごほっ!」全身を鞭で切り裂かれ、隕石に潰されて、常人なら出血死するレベルで地面に血が広がっていた。しかし、巧海は立っていた。
「ほう。拳法を使わずともたっていられるのか。その頑強さ称賛に値するぞ。しかし、もう虫の息。ワシがじきじきに止めを刺してやるかのぅ。」
ベルニカは刺突武器のレイピアを二本持ってきた。
「このレイピアは、ダイヤモンドをも簡単に貫いて砕く代物じゃ。せめてもの情けに苦しまずにあの世に送ってやろう。」
確実に仕留めるために、心臓と脳をめがけて振り下ろされようとしたその時、
「師匠お止めください!」
「カルアたん!?何をしておるのじゃ!?」
「この方は私の命の恩人なのです!いくら恨まれる一族とは言えど、それは私達が蒔いた種も同然のはずです。」止めを刺そうとしたベルニカの前にカルアが立ち塞がり、巧海を庇った。
「どういうことじゃ。」
「先程の試合の間に私、巧海さんの種族を調べておりました。龍神族だと知り昔の文献を見ると、龍神族はその昔あらゆる争いや厄災をはね除け世界を各地で守っていた。しかし、その力を妬み恐れた人間達は他の種族達に龍神族のありもしない罪をでっち上げて全滅にまで追いやったと。しかし、長を身籠っていた元長の死体だけは発見されずにいた。恐らく巧海さんはその元長から産まれ、長い月日のなか正体を隠して生きてきたのでしょう。それに師匠、よく考えてください。もし世界を滅ぼすつもりがあるのなら私を助けず、ゴブリン盗賊ごと消し去られているはずですよ!それにこんな素直に攻撃をさせてもらえるなんて到底思えません!」確かにそうだ。ベルニカの言ったことが本当なら、先程の魔法程度は反撃もできる。それに、ゴブリン盗賊ごとカルアを消すこともできた。しかしベルニカは、
「それでも、こやつは殺さねばならぬ。もし、そやつにその意思がなくともいずれワシらやワシら以外の種族も滅ぼすかもしれんのじゃ。じゃから、そこを退くのじゃ!」
「退きません!例え師匠の願いと言えど、私を救ってくれた恩人をみすみす殺すことなんてできません!」一歩の引かぬ二人が張り合ってるなか、巧海はふらふらになりながらも歩み始めた。
「どこに行くんですか!?まだお礼もしてないのに!」
「この村を出るさ。その方が手っ取り早い。それに、せっかく再開した師弟がケンカする何て……しかも俺のことでケンカされるのは嫌なんで。」血を流し、半身を引きずる形でアルテアを出た。そのあとのアルテアは酷く静かになった。
カルアが村を出ようとすると、ベルニカは結界を5重掛けし、その足取りを止めた。
「師匠!?」
「いくら可愛いカルアたんの決めたことでも師匠として止めなければならんのじゃ。ワシはキミに嫌われるのは嫌じゃが、キミのためじゃったら、鬼にでもなんにでもなる。」
「ならば、なぜあの方を避けさせるのですか?その理由を教えて下さい!理由によっては例え師匠と言えど、殺してでも私は行きます。」それを聞くと、ベルニカはため息を一つついて、
「おぬしに話しておかなければならぬな。龍神族の全てを。」
一方その頃、ポンドとジャンベルンは魔導暗殺軍アジトに到着していた。門番の二人が槍を構え
「「何者だ!名を名乗り用件を申せ!!」」
するとポンドは、
「我は月喰らう猟犬リーダー、ポンド・レヴィアンである。魔導暗殺軍龍殺しの封玉リーダー、シュヴァルツェ・エイブラントに話がある。ポンド・レヴィアンが来てると言えばわかる筈だ。」
すると門番の一人が、
「失礼しました!まさかかの有名な盗賊のリーダーであり、シュヴァルツェさんの御友人だったとは。どうぞ、お入り下さい!」とさっきとはうってかわって出迎えた。
「アニキスゲェっすね!こんなデケェアジトにいるリーダーとダチであり好敵手だなんて。」
「誉めても出るのは今日の飯ぐらいだぞ。」二人はそう話ながら中に入った。建物のなかはまるで一つの国の王城のような作りになっており、その玉座に一人、豪奢な装備をしたダークエルフが一人いた。その人物がポンドの言っていた龍殺しの封玉のリーダーシュヴァルツェ・エイブラントであった。
「よう!シュヴァルツェ!久しぶりだな!」
声をかけると、座っていた玉座から即座にたち駆け寄った。
「まさかポンド……なのか?久しぶりだなぁ!あの日の決闘以来だ。もう二年になるのか?」
「ああ、そうだな。あれお前目ぇどうしたんだ?」ポンドはシュヴァルツェの傷ついた両目を見て、
「ああ、あの決闘のあと俺はもっと強くなるために、修行に出てたんだ。だけど、ある時超越魔法を唱える代償に視力を失ってしまってな。今声と魔力量でお前の姿を感じている。お前……少し痩せたんじゃないか?」
「あぁ、少しはな。それはそうと今日来たのは……。」
「皆まで言うな。俺の軍団が必要なのだろう?
お前程の強者が俺の軍団を必要としているのならそれほどのことなのだろう?それで何人くらい必要なんだ?」
「全員いる。」
「全員だと!?それほどのことなのか?」
「あぁ、それに相手が相手だから用心のためにもな。」
「確かに、お前が注意深いのは昔から変わらないな。わかった、出陣しよう。」二人の話し合いが成立した直後に、通信魔法がかけられた。
〔アニキ!アニキ!こちらディエド。〕
〔どうした?〕
〔アニキ落ち着いて聞いてくれ、今ディガドの連絡を聞いてヤバイことがわかった。アニキをのした相手のことなんだが……やつは只者じゃなかった!〕
〔やはりか。それで何がヤバイんだ?〕
〔そいつの種族なんだが驚かないでくれ、そいつの種族はかの伝説の龍神族だったんだ!〕
〔それは本当か!?しかし、可笑しくないか?そいつが俺のことをのしたなら俺は死んでないとおかしいぞ?〕
〔恐らく力を最小限にした一撃を放ったんだと思う。俺も聞いてビックリしすぎたんだ。どうする?〕
〔とにかくお前らは一旦俺のところに戻ってこい。あとのことは俺が何とかする。〕
〔わかった。俺たちもアジトに戻るようにする。〕通信が途絶えて、
「何かあったのか?」
「ああ。下手したら、全軍でも足りないのかも知れない。相手がかの伝説の種族、龍神族なんだ。」
「おい……嘘だろ。あの伝説の種族かよ。だとしても、大丈夫だ。秘策がある。実はこの目を犠牲にした魔法がその龍神族を殺せるかもしれない魔法なんだ。だから、遠慮せず頼ってくれ!」
「言われなくてもそうするさ。何せ魔法ではお前の方が一枚上手だからな。」
「抜かすなよ。戦闘技術踏まえたら圧倒的にお前の方が強いよ。」
「それなら俺等が揃えば最強じゃねぇか。魔法に強いお前と肉弾戦に強い俺でやつを倒すぞ!」
「ああ。その前に、連携の練習だ。俺等なら3日で習得できるはず。」二人は出会った当初の思いだし、二人は修行に励む準備をした。その頃村を出た、巧海は治癒魔法で体を治していた。
「はぁ。全く、助けたかと思ったら理不尽に殺されなきゃいけないんだろうか。こんな人生になるなら転生何てのぞまなければ……。」と空を仰ぎ、泣きそうになっている。すると……突然雷が鳴り出し、
「巧海よ。聞こえますか?巧海よ。女神カミュシュエルが生中継で、お告げに来たよぉ!」
「うるせぇ。今それどころじゃねぇ。」
本来なら聞かなきゃいけないお告げなのに、先程の理不尽な扱いに予想以上のショックを受けてるなかさっきのテンションで来られたら誰だって腹立つ。
「いつまで落ち込んでるの?前もって私言ったはずですよ?」
「あぁ、確かに言ったさ。だがよ、序盤でこんな扱い受けて殺されかけて、それでも世界を壊さずに救え?あんたは鬼でしかねぇよ。俺は今すぐにでも殺せるなら、あの村を全部焼き払いたい。」
「しかし、あなたをちゃんと見てくれてる人も壊すのですか?あなたを最後まで見てくれた人もあなたは壊して悪魔に成り下がるのですか?」すると、巧海はカルアのことを思い出した。薄れる意識のなか彼女だけは自分のことを守ってくれてたことは覚えている。
「すまん、カミュシュエル。取り乱した。」
「分かれば良いのですよ!そうそう、あなたが立ち寄った村なのですが、あの村は前に滅んでいますよ?」それを聞くと頭が真っ白になり、
「は?どう言うことだ?」
「いや、正確には元々の村はその先にあります。あなたが見たものは全部幻ですよ。あのカルアって娘があなたを庇っていたようですが、あれも偽物です。可笑しいとは思いませんか?あの炎を放ったのは貴方なのに、追われていたのはあのカルアっていう魔女ですよ?」確かに、今思えば不自然なことだらけだ。炎を放ったのは俺なのに、なぜ盗賊たちはカルアをおっていた?この一連を企てたものがいる。
「まぁ、そんなことよりもお告げです。本当のアルテア村にお告げをしたので、そこで私の頼んだものを受け取ってください!」
「ふざけんな。この期に及んで頼み事かよ。俺は曲がりなりにも殺されかけたんだぞ。まず心配するのが女神じゃねぇのかよ?お前が世界救えって頼んで転生させたんだろうが!俺は転生せざるを得ない状況だったから仕方なく転生されたんだ!なのに……なのに、何でこんな目にあわなきゃいけねぇんだよぉ!」巧海は泣きながら悲痛の叫びをカミュシュエルにぶつける。
「しかし、あなたには回復魔法もあるし。あなたの心配よりも世界の命運が大切なんです!」カミュシュエルはいってしまったと思い口を閉じたが時既に遅し。
「そうかよ……俺よりも世界が大事かよ。ならなんで、お前が世界を救わないんだよ!何で俺なんだ?というか何でこんな種族に転生させた!?他にもあったはずだろうが?何でなんだよぉ!」悲痛に怒鳴られてもカミュシュエルはめげずに説明を続ける。
「実は、世界を侵略している相手が相手なのです。かなう種族が龍神族でないと敵わないと思い。転生適正者を探していてあなたがいたからこの種族に転生させました。」
「でも、俺が世界を救っても元の世界に戻れない挙げ句、世界を救う前に俺が死ぬかも知れないんだろう?だったら俺以外にもいるんだろうが!俺がなにしたって言うんだよぉぉぉぉぉぉ!!!」
とうとう、めげて我慢できなくなってしまい、
「じゃあ、あなたを諦めて他の人に世界を任せます。あなたよりもものわかりの良い方に世界を救ってもらいます。」
そう言うと、お告げしていた映像が消えて、本人が降り立った。
「従って貴方には死んでもらいます!」光の槍を持ち、構えをとり、刺し殺そうと向かったカミュシュエルだがすぐさまその槍は弾かれた。
「えっ?何で?」
「お前も……お前もあいつらと一緒か。嫌われている種族と分かれば、自分がどうにもできないと諦めれば……殺そうとするのか。だったら……。」
すると、どす黒いオーラが沸き立ちやがて力強く吹き出す!
「だったら……俺のこの力で……この世界ぶっ壊してやるぅぅぅぅぅ!」よりいっそうオーラが強く吹き出し、やがて黒い柱がたった。少したつとその黒い柱は消え、中から巧海が出てきたが、今まで通りの人間の姿ではなく、どす黒い龍人間になっていた。
この龍人間は巧海の新たにわかった魔法だが、恐らく禁忌の力だろう。龍人間になった巧海は元に戻るのか?果たしてカミュシュエルとの対決は平和に終わるのか?
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