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新島誕生
東都は毎日のように地震が頻発するようになっていた。
しかし大きな被害はなく交通機関やライフラインにも殆ど影響はなかった。
ここに集う800万の住人は少しずつ緊張感が薄らいで行った。
カガリは間違いなく妊娠しているのだが一向にお腹の変化はなかった。
あの島で玉が実ったと言った時が受精であればもう8ヶ月以上は経っている。
もし勘違いであっても6ヶ月は間違いないのだ。
食べる物は相変わらず際限なく食べ尽くすのだが、アルコール類は一切口にしなかった。
ナガテは意を決して鏡川医師に診てもらうことにした。
鏡川マイコは数ヶ月前に北海市から東都へ引越して系列の東都総合病院に勤務している。
越して来た時みんなで歓迎会をして改めて親交を深めた。
ナガテが電話をしてカガリの事を大まかに話すと最初は言葉を失って黙りこくってしまった鏡川だったが、何となく予想はしていたような事を言った。
産婦人科医ではないが検査や状態を把握することは出来る。
妊娠しているのは間違いなく5cmに満たない胎芽に近い状態だった。
2ヶ月ほど前に受精したはずだという事だったが交わりはなかったしカガリも1年近く月招き(生理)は無いと言った。
普通ならば成長出来ず流れてしまうのだが小さい鼓動を元気よく打ち鳴らしていた。とにかく原因は不明であり現代の医学ではあり得ない事だった。
鏡川医師も頭を抱えてしまったが、絶対この事を知られないようにしないと大変な事になると顔色を変えてみんなに言った。
「チョットだけ先生と女だけの話があるからナガテは外で待っててくれる?」
カガリは微笑みながら言った。
ナガテは何だか面白くなかったが従った。
20分位で2人微笑みながら診察室から出て来たが、
ナガテは鏡川医師の腫れぼったくなった赤い目は見逃さなかった。
それから1ヶ月は東都湾もカガリも状況は変わらなかったが、
カガリの日常が大きく変化した。
社長の秘書として常に一緒に行動している間にTVや映画等のプロディーサーやディレクターの目に止まりだした。
カガリは今や山の猟師では無く社長のずば抜けたセンスとコーディネートで一見モデルか女優の様になっていた。しかも元々可愛いしスタイルも168cm程で出る所は出て締まるべき所は締まっていた。
誰もが振り向くような都会人になっていたが中身は変わりようなかった。
社長もナガテもカガリも最初はありえないと固辞していたが、
何も喋らなくていいし何の質問もしないし、
ただ笑顔でいるだけでいいという事でTVの進行アシスタントを始めた。
出演者からは色々と質問を受けることがあったがいつも微笑がえしで何も喋らないし答えなかった。名前だけはカガリとだけクレジットされていた。
そのうちカガリの名前は独り歩きし始めてネットや雑誌には、
(謎の美女 カガリを追う)(カガリの知られざる日常)など特集が組まれる程になっていった。
事務所には出演オファーが殺到しナガテの3倍程に膨れ上がった。
社長もカガリの身体の事はナガテから聞いていたし無理は絶対させないと言う約束で始めたので、社長がどうしても断れない物だけ出演したがそれでもかなり無理をさせた。
カガリは仕事を1ヶ月半程は楽しくやっているようだったが、
ある日事務所でナガテのところに来て
「いっぱい月招きが来ちゃったよ...」
と言って立ち竦んだ足元には多量の血溜まりが出来ていた。
ナガテはすぐに救急車を呼び鏡川医師に連絡して受入を依頼した。
事務所が入ったビルはカガリの救急搬送が広まり騒然とした。
ストレッチャーに乗せられたカガリの意識はハッキリとしていて話をしながら救急車両に乗り込んだ。
とその時...
地鳴りが起こり東都湾で大きな噴火が始まった...
湾の中心辺りから黒い海水と噴石を高々と噴き上げ白い水蒸気と噴煙が立ち上り始めた。そしてみるみる内に黒い大地が持ち上げられた。
黒い大地のアチラコチラで白い水蒸気が噴出し中心部からは噴煙と噴石が同時に噴き上げられた。
鏡川医師に付き添われて病室に入ったカガリとボク達はTVをつけて噴火の様子を見て溜息をついた。
黒い大地が出来上がるまで10分も掛からなかったようで専門家の顔は真っ青になっていた。
大地は少しずつ持ち上げられ高さを増した。
カガリは輸血の必要はなかったが点滴を受けた。
「カガリちゃん...
凄い人気で大変だと思うけど少し身体の事を考えなくちゃね。」
鏡川医師が言うと、
「おねえちゃん、もうそれはいいの。
どうやったら鎮められるのか?
きっとヒババが教えてくれる筈だけど...
全然分からないの。
でもおねえちゃん...
わたしとの約束は忘れないでね。」
カガリがたずねると、
「うん...分かってるよ。」
鏡川は寂しそうにこたえた。
「先生はいつからカガリのおねえちゃんになったんですか?」
ナガテが笑いながら聞くと、
「え...あ、うん...
マイコつながりでいいかな。
って言うことになったの。
とりあえずよろしくね。」
鏡川は苦笑いしながら言った。
また大きな地震があり、TVでは天空に噴き上がる噴煙を映し出していた。
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