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東都崩壊
電話は社長からだっだ。
「大変なの!マイコが...
マイコが出血して苦しんでいるの。
救急車を呼んだけど。
鏡川先生の所でいいかしら?」
「そうして下さい。ボクもすぐ向かいます。」
ナガテはそう言うと鏡川を見つめた。
マンションから病院まで歩いて行ける距離だ。
まだ夜は深かったが東都湾の方は明るく時折、地響きとも地震ともつかぬ揺れと轟音が響くなか2人は病院へ走った。
カガリはまだ病院に着いていなかった。
遠くでサイレン音が近づいた。
カガリは血色を失っていたが意識はハッキリしていた。
「ねえ、ナガテ...
ヒババの声聞こえなかった?」
「うん、聞こえなかったと思う。
なんか言ってた?」
(この街は持たない。
早い内にみんな出るように言えって。
お前達が多くの人に顔を知られたのはその為だって。)
...そう言ってた。
東都湾の火山はいよいよ勢いを増し噴煙は空高く湧き上がり溶岩も絶え間なく噴き流れた。
翌朝、カガリが入院したという噂が流れ病院前には多くのメディアが集まっていた。
カメラのフラッシュが2人を包む中マイクの前に立った。
「この火山はこれから半端なく成長してとんでもない事になります。
どうかみなさん東都を離れて安全な場所に避難して下さい。
ボク達は専門家ではありませんがどうか信じて下さいお願いします。」
ナガテとカガリの2人は神妙な顔で頭を下げた。
「カガリさんは以前も運ばれましたよね。
何か病気があるんですか?」
「どうしてこの火山の事を何の根拠もなく言えるんですか?」
「お2人はいつも一緒にいらっしゃいますが、
恋愛中とかではないんですか?」
そう言った質問が飛び交ったが何も言わずに場を去った。
このニュースを見た国家保安関係者は煽動罪を検討し始めた。
火山は日増しに激しくなり噴煙も噴石も増え火山弾も確認されるようになり東都湾岸地域は立入禁止となった。
しかし専門家からは火口から東都中心部までは20km以上あるために経験的また歴史的に噴出物は飛んでこないと発表された。
噴石や火山弾は海岸迄には降り注ぐようになったが大きな被害は出なかった。
しかも火山活動は次第に収まって行った。
カガリとナガテは非難を受け始め任意で警察署へ出頭を求められた。
「この火山活動は決して経験的・歴史的見地で語られるものではない。この星が生まれて行われて来た魂の営みを見る事になる。ミジンコみたいな人の営みとは比較にならない壮大な継承があるのです。ボク達は平伏すしかないんです。」
ナガテはこの主張を繰り返した。
しかし耳を貸す者はいなかった。
そのうち雪帽子島沈没の情報が出始めそれに付随してカガリはその島に住んでいたと言う事やこの一連の火山活動はカガリに関係あるようなことも流れた。
社長は事務所を東都の西部地区に移すことにした。
東都へは車で2時間半ほど掛かる所で山に囲まれた風光明媚な田舎だった。
事務所の何人かは東都に残ることを選んだがナガテ達は住まいを売り払って引越した。
東都湾の火山は鳴りを潜め、まるでエネルギーを蓄積しているように感じたが、東都の住民はこれで収束するとタカをくくってしまった。
それから数ヶ月は普段の日常を過ごすことになったが東都崩壊は誰も止めることは出来ない。
その頃ナガテとカガリは仕事を全てキャンセルして田舎で野菜や果物を作って暮らし始めていた。後で嶋崎も引越して来た。
その頃から不思議とカガリのお腹が少しずつ膨らんで来てるようだった。
ナガテはここに引っ越す時に鏡川医師を誘っていた。
彼女の住まいは火山活動が始まれば確実に崩壊すると思っていたからだ。
相変わらず東都湾の火山は活動しているものの住民を欺くように狼煙のような噴煙を上げていた。
それは突然...人の心のスキを突くように始まってしまった。
東都湾の火山は大爆発を起こし噴煙は天を突き抜けた。
一瞬の内に東都は闇に包まれ噴石と火山弾が上空高く噴き上げられた。
そして表面だけ冷された黒い玉は着弾する度に赤黄色い溶岩で覆われ全てを溶かし燃やし尽くした。
人は一瞬にして溶け、家は燃え上がり、車は爆発した。
高層ビルは所々で火の手が上がり、崩れ落ちるビルも数え切れなかった。
火山はこの星の砲台のように噴石と火山弾を放った。
東都はほぼ1日で崩壊した。
一体どれだけ魂の消失を必要にするのか見当も付かなかった。
火山は成長しながらエネルギーを放出し続け無限のループのように繰り返した。
主な情報を全国に発信していた東都は自分の崩壊を知らせる事はなかった。
そしてこの国の政は王都に移された。
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